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日本ではゲームといえばテレビやスマホがメインですが、近年、対面で行う非電源ゲームも注目を集めています。人気のボードゲーム・カードゲームを紹介します。
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◇ワーカープレースメント③
前回は能力に差がある「ワーカープレースメント(労働者を配置してアクションを実行するメカニクス)」を紹介しましたが、今回はさらに変則的な2作品を。
時間が過ぎればあの世に
「村の人生」の舞台はある村。時代も場所も明記されていませんが、たぶん中世ヨーロッパかな。プレーヤーは家族をさまざまな職業に就け、一族の名誉を高めることを目指します。
個人ボードに置かれた家族駒は農民。彼ら彼女らを鍛冶屋や馬車工場などに送り込めば職人となって農具や馬車を製作してくれます。議会に送り込めば議員となって一族にさまざまな便宜を図り、教会では修道士として出世競争の末に名声を獲得。村から旅に送り出せばさまざまな町の産物を送ってきてくれます。
道具を製作しても議会で偉くなろうとしても、当然時間が経過しますよね。示されている砂時計アイコンの分、個人ボードにある「人生トラック」を進めなくてはなりません。そして丸い駒がトラックを1周するたびに家族の誰かが死去するのです。アクションにはボード上に置かれた5色のキューブを一つ取ることが必要ですが、黒い疫病キューブを取った場合も寿命が縮みます。
もっと働いてほしい場合も、そうでない場合も
よく見ると家族駒には数字が振られています。亡くなるのは一番数字が小さい世代から。せっかく職人になっても議員になっても盤面から取り除かれてしまい、それ以上働いてくれずなんかもったいない。
でも、「虎は死して皮を残す」という言葉がありますが、功労者として「村の歴史」に記載されることによって名誉点が与えられるのです。この場所は職業ごとに定員があって早い者勝ち。埋まってしまっている場合は、名誉点がもらえない共同墓地行きになります。そのため、「そろそろあいつ死んでくれないかな」とか「ああ犬死にかあ」など物騒な会話が飛び交うことにも。
その他、旅人が村に帰るのは亡くなった場合のみだとか、教会ではお金があれば簡単に出世できるようになるだとか。スパイスの利いた設定がたくさん。日本人が作った「人生ゲーム」は個人の人生をシミュレートするのに対し、ドイツ人夫妻は個人よりも一族に焦点を当ててゲームを制作しました。考え方の違いが面白いですね。
「レッドアウトポスト」 遠い惑星の共産主義
かなりマイナーな作品ですが、ワーカーが全プレーヤー共有というシステムが面白いのが「レッドアウトポスト」。ロシアのゲームですが、テーマがぶっ飛んでいます。
米国と宇宙開発競争をしていたソビエト連邦が、遠い惑星で平等社会をつくる極秘作戦を遂行。宇宙船は不時着してしまいますが、惑星を開拓して新たな共産主義社会を築きました。プレーヤーは指導者として先代から託されたこの惑星をさらに繁栄させ、同志をより幸せにすることを目指します。
6個のワーカーは共有
登場する同志は、羊飼い▽農民▽漁師▽鉱山労働者▽委員▽官僚の6人。それぞれのワーカーはプレーヤー個人のものではなく、1フェーズに1回だけ他プレーヤーが使用していない駒をアクションスペースに動かして働かせます。使ったワーカーの人物ゾーンに自分の影響力駒を置き、このワーカーに影響力があることを示します。牧場に置けば羊毛を生産し、農場に置けば小麦を生産。共産主義なので生産物は共通の倉庫に置かれ、生産に寄与すると勝利点が入る仕組み。1ラウンド5フェーズを2回繰り返したらゲーム終了です。
適材適所を心掛けて
職場と職業には相関関係があり、不得意な職場に行かされると幸福度が下がります。例えば牧場に農民を置くと、農民の幸福度が1低下。鉱山では鉱山労働者以外は2低下。真面目な委員以外は幸福度が2上昇する酒場なんてのもあります。置いている影響力駒が最多あるいは最多タイのワーカーの幸福度がプラスだとラウンドの終了時に勝利点がもらえ、逆に適材適所の原則を守らず幸福度が下がったワーカーだと失点することになります。
このほか生産物が三つ手に入るものの幸福度が2下がる強制労働収容所や、建設に貢献すると最終勝利点が入る不気味なソビエト宮殿というアクションスペースも。運要素もほどほどにありますが、他プレーヤーの動きをどう予測するかが勝敗の鍵。手番によって有利不利が大きいので3人がベストでしょう。ブラックなテーマですが、クセの強いゲームをやってみたいならお勧めです。【野地哲郎】=次回は6月5日掲載
「村の人生」データ
2~4人用◆所要時間60~90分◆12歳以上対象◆インカ・ブラント、マルクス・ブラント作◆2011年初版
「レッドアウトポスト」データ
1~4人用◆所要時間30~60分◆10歳以上対象◆ラマン・フリホリック作◆2019年初版