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ニッポンへの発言

アイドル評論家・中森明夫さんが、エンタメ業界のさまざまな話題を軸に世相を切り取ります。

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キーワード 萩尾望都の衝撃=中森明夫

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 衝撃的な本を読んだ。萩尾望都著『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)である。萩尾は巨匠漫画家だ。1969年のデビュー以来、人気を博し、少女漫画家として初の紫綬褒章、文化功労者にも選出された。

 今作は漫画作品ではない。回顧録である。福岡県から上京した萩尾は70年から2年間、練馬区南大泉の古い長屋で同学年の漫画家、竹宮恵子と同居生活を送る。ここに寄り集う同世代の女性漫画家からは、その出生年(昭和24年前後)から“花の24年組”とも称され、後に“大泉サロン”とも“少女漫画家版トキワ荘”とも呼ばれるようになった。

 しかし(トキワ荘と異なり)、奇妙にも当事者である萩尾や竹宮の詳しい証言がない。2016年、竹宮は自伝『少年の名はジルベール』(小学館)を上梓(じょうし)、初めて萩尾との顚末(てんまつ)を明かした。73年に一方的に「距離を置きたい」と通告して関係を断ったのだと。そこには萩尾の才能に対する恐れや嫉妬があったとも明かしている。

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