文春砲にあって新聞にないもの 文春編集局長×スクープ /上

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
総務省接待問題などのスクープが続いた2021年2月の週刊文春
総務省接待問題などのスクープが続いた2021年2月の週刊文春

 週刊文春が今年もスクープを放ち続けている。芸能スキャンダルだけではなく、政官界にも容赦なく「文春砲」が鳴り響く。その勢いはメディア業界で群を抜いているように見える。私も最近、文春の追いかけに終始して悔しい思いをしてきた新聞記者の一人だ。われわれ新聞は、なぜ「勝てない」のだろうか――。週刊文春編集局長の新谷学さんを訪ねた。【松倉佑輔/デジタル報道センター】

 2021年2月3日、永田町と霞が関が揺れた。放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男らが、総務省幹部に接待を繰り返していた事実を文春オンラインで報じた。後に問題は、NTTトップによる総務省幹部への接待、現・元総務相との会食問題へと拡大。総務省は一斉調査に追い込まれ、多くの幹部が処分された。

 記者は3月まで、毎日新聞経済部の総務省担当記者だった。文春報道による嵐はすさまじく、行政への影響や総務省の対応などの取材、処分などの解説記事の執筆など、文春が投じたネタを追い続けた。

 こうした目に遭ったのは、週刊文春の「特集班」のおかげだ。その週のニュースやスクープなど特集記事を書くグループで5人のデスクがそれぞれ6、7人の記者を率いる。記者は3月末まで30人だったが、4月1日から新入社員が加わって32人に増えたという。手がけるネタは、記者から毎週5本提出される企画案を基に決まるので、単純に計算して160本程度から選ばれていることになる。

 連載などを含めた編集部全体で57人。週刊誌では最大規模だが、大手新聞社が1000人単位を抱えているのに比べると、多いとは言えない。

費用も訴訟も…特ダネの「本気」度

 ここで新谷学さんについて紹介したい。週刊文春の記者やデスクなどを経て12年4月に編集長に就任すると、スクープ追求路線を徹底して「文春砲の生みの親」と称されるようになった。18年からは新設された週刊文春編集局長に就任、デジタル展開も含めた週刊文春のビジネス戦略を統括するキーマンだ。

 「よろしくお願いします」。文芸春秋本社の会議室にそう言いながら現れた新谷さん。しゃれたスーツ姿。柔和な表情の中にも眼光は鋭い。

 まず、これまで何度も聞かれてきたであろう、スクープの秘訣(ひけつ)について率直に聞いた。答えはシンプルだった。

 「スクープを『本気で』狙っているんですよ。全員が徹底して、本気でスクープを取るために腹をくくっているんです」

 ちょっと待ってほしい。記者ならそれを狙うのは当たり前のような気がするが…

この記事は有料記事です。

残り3576文字(全文4612文字)

あわせて読みたい

この記事の筆者
すべて見る

注目の特集