この国はどこへ コロナの時代に 菅首相の政権運営、政治学者・姜尚中さんの見方 見えてきた「惨事に便乗」政治
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「五輪」「改憲」…強まる安倍路線の監視を
3度目の緊急事態宣言がまたも延長された。変異株が猛威をふるう中、新型コロナウイルスの感染収束は見通せない。政府の対応には「後手後手」という批判がつきまとい、約2カ月後に迫った東京オリンピック、約3カ月後の東京パラリンピックを巡っては中止を求める声が日増しに高まっている。菅義偉首相の政権運営を、政治学者の姜尚中(カンサンジュン)さん(70)はどう見ているのか。
「もしかしたら安倍晋三政権時代を終わらせる役割を果たすかもしれない。政権発足時は、そんなこともちらりと思っていたんです。残念ながら、菅さんにとって、自身も政権中枢にいた安倍時代の7年8カ月が『桎梏(しっこく)』になっていますね」。画面の向こうから、落ち着いた語りが聞こえてきた。緊急事態宣言中のゴールデンウイーク。直接会いには行けないが、テレビでおなじみの声に親近感がわく。ちなみに桎梏の「桎」は足かせ、「梏」は手かせの意味。転じて人の行動を厳しく制限し自由を奪うものを指す。
姜さんは政治学者としてテレビの討論番組や報道番組に数多く出演し、「悩む力」(2008年、集英社新書)といった生き方を模索する一般書のベストセラーも多い。その言葉に多くの人が耳を傾けるのは、極論に走らない冷静な視点への信頼感ゆえだろう。16年からは故郷熊本の県立劇場館長も務める。昨年10月に出版した「生きるコツ」(毎日新聞出版)では、古希を超えてたどり着いた、地方での「平穏な生活」を静かにつづるが、中央の政治を見つめる視点は変わらず鋭い。
では姜さんが指摘する菅政権にとっての「桎梏」とは何だろう。その一つはなんといっても東京五輪・パラリンピックだという。安倍政権時代に華々しく招致に成功したものの、コロナの感染が収束しない中、各社世論調査では「中止」「再延期」を求める声が6~8割台に達している。
「昨年から今に至るまで、日本全体を覆うオリンピック…
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