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あしたに、ちゃれんじ

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「愛」で支援つなげよう 生活困窮者に弁当無償配布 CFで協力募り=中川悠 /大阪

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居酒屋「旬菜鮮魚てつたろう」を経営する柳川誉之さん=大阪市北区で 拡大
居酒屋「旬菜鮮魚てつたろう」を経営する柳川誉之さん=大阪市北区で

 大阪、兵庫などに3度目の緊急事態宣言が発令され、飲食業はさらに厳しい状況に立たされている。酒類を提供する飲食店は休業、しない場合も時短の対象で、緊急事態宣言が終結するまで店を開けない選択をした所も少なくない。一方、コロナ禍による経済の悪化は、ホームレスやひきこもりなど、社会的に弱い立場にある人々の生活も直撃している。

 苦境の中で、自身の店の運営もままならない状況にもかかわらず、生活困窮者の命を守ろうと寄付を募り、弁当を無償配布している居酒屋がある。大阪市北区中崎町にある「旬菜鮮魚てつたろう」だ。

 「自分たちがつらい状況の時だからこそ、同じようにしんどい境遇の人を応援する気持ちを忘れたくないんです」。店のオーナーで株式会社「フォーシックス」代表の柳川誉之(たかゆき)さん(50)は言う。

 柳川さんは昨年、生活困窮者の緊急支援のためにクラウドファンディング(CF)を立ち上げ、合計金額は300万円を超えた。支援NPOのメンバーらとともに地元で路上生活者への夜回りや弁当配布の活動を続け、児童養護施設の退所者らにも支援の手を広げている。

 7人きょうだいの末っ子として大阪で育った柳川さんには、一生をかけて果たしたいと誓った目標がある。「世の中から自殺者を減らす」。喫茶店を営んでいた3番目の兄を経営不振による自殺で亡くし、柳川さんは20歳の時にその跡を継いだ。「長兄もまた違う事情で自殺を考えたことがあった」と明かす。憔悴(しょうすい)しきった兄の姿を見かねて、見ず知らずの人が「ごはん」を食べさせてくれたという。

 「その小さな優しさに心を助けられ、長兄は自ら命を絶つことはなかった」と柳川さん。「ごはん」を届けることさえできれば、誰かの命を守れる。ネガティブな気持ちになっても温かい食べ物さえあれば、死を選ぶ前に踏みとどまらせるきっかけを作れる。

 柳川さんが現在取り組むプロジェクトが、毎月定額で飲食店を応援し、生活困窮者にも継続的に食事を届ける「EAT&DELIVER(通称イーデリ)」だ。ITに詳しい仲間の支えで今年1月にホームページも開設した。地元の飲食店から地元の生活困窮者を支えていくイーデリは、大阪だけでなく全国で通じる考え方。そこには「飲食店の地位を高めていきたい」という思いも込められている。

 柳川さんは「今が踏ん張り時」と店を支えるスタッフと声を掛け合い、地域のNPOと手を組み合って「おいしいごはん」を届けている。「飲食店には二つの『あいうえお』があるんです」と教えてくれた。一つは、愛/命/運/縁/恩。もう一つは、ありがとう/いらっしゃいませ/うまい/えがお/おかげさま。店、客、そして地域が「おかげさま」でつながる社会が求められている。

 「EAT&DELIVER」(http://tetsutarou.com/eat_deliver)。<次回は6月18日掲載予定>


 ■人物略歴

中川悠(なかがわ・はるか)さん

 1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から、農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。

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