襟を正すべき自民党幹部が、責任の押し付け合いをしている。あきれるほかない。
2019年参院選を巡る買収事件で有罪が確定した河井案里元参院議員の陣営に、党本部から1億5000万円もの政治資金が提供されていた問題である。資金の支出について、二階俊博幹事長は「私は関係していない」と述べた。
幹事長は、総裁に代わり党務をつかさどる。候補者の公認と政治資金の配分を決める最終責任者であり、説明する責任がある。
二階氏側近から当時の担当者だったと名指しされた甘利明元選対委員長も「1ミリも関わっていない」と、真っ向から否定した。
巨額資金が買収の原資となった可能性が指摘されている。支出を誰が決めたのか分からないのでは、政党の体をなしていない。
二階氏の発言に対し、買収の舞台となった広島で、党県連から「これほど県民を侮辱する言葉はない」と反発の声があがったのは当然だ。
案里元議員の擁立を主導したのは安倍晋三前首相だった。当時の総裁として、安倍氏が説明するしかない。
官房長官だった菅義偉首相も、選挙応援で何度も現地入りした。夫の河井克行元法相は菅氏の側近だった。菅氏も無関係では済まされない。
二階氏はこれまで、一連の事件を「他山の石」と評し、無責任だと批判された。克行元法相の裁判で関係書類が検察に押収されていることを理由に、菅氏や二階氏は説明から逃げ続けている。
案里元議員の当選無効を受けた4月の再選挙では自民党候補が敗れた。政権幹部が事件に向き合わず、政治不信の払拭(ふっしょく)に取り組まなかったからだ。国民の厳しい審判を自民党は受け止めるべきだ。
にもかかわらず、二階氏側近の林幹雄幹事長代理は記者会見で「根掘り葉掘り、党の内部のことまで踏み込まないでもらいたい」と語り、報道陣の質問を封じる姿勢さえ示した。
資金の大半は、国民の税金から支出される政党交付金だった。「政治とカネ」の問題に対する自民党の姿勢が問われている。
うやむやにしたまま幕引きすることは許されない。