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和解のために 2021

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和解のために 2021

「正義」に抑圧され、声出せぬまま亡くなった被害者に思いを

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インタビューに答える朴裕河韓国世宗大教授=東京都新宿区で2020年3月6日午後3時6分、宮本明登撮影
インタビューに答える朴裕河韓国世宗大教授=東京都新宿区で2020年3月6日午後3時6分、宮本明登撮影

 慰安婦問題をめぐる韓国司法の判断は二分された。元慰安婦の女性らが日本政府に賠償を求めた第2次訴訟で、ソウル中央地裁は原告の請求を却下。同地裁が今年1月、日本政府に賠償を命じた第1次訴訟判決を真っ向から否定した。第2次訴訟の判決では日本政府の立場が受け入れられたが、原告側は判決を不服として控訴し、訴訟は長期化する見通しだ。韓国・世宗大の朴裕河(パク・ユハ)教授は「二つの司法判断」を検討し、慰安婦問題の本質を捉えぬ論理に警鐘を鳴らす。

被害者本人がほとんどいない「原告」分裂も

 先月、元慰安婦による日本国家相手のもう一つの訴訟判決が、ソウル中央地裁で出された。1月の判決の原告が主に元慰安婦の支援施設「ナヌムの家」の居住者だったのに対して、4月に判決の出た訴訟は「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連。旧韓国挺身=ていしん=隊問題対策協議会、挺対協)側が主導したものと聞く。

 「被害者」と記された16人のうち判決時点で生存者が4人しかいないため、今や実際の「原告」はほとんど遺族や養子であるのだが、そのうちの一人は「(社)挺身隊問題対策協議会」と記されている(4月21日付朝日新聞インターネット版の記事は、当時代表だった尹美香=ユン・ミヒャン=国会議員が「元慰安婦、金福童(キム・ボクトン)さんの承継人」になっていると報道した)。金さんは生存当時から奨学金として財産を寄付してきたから、支援団体の人に「原告承継人」の資格を渡したことはありうることだ。しかし、横領の嫌疑で在宅起訴されている尹氏に、日本の「賠償金」を求める資格がなおあるかどうかは考えるべきだろう。

 しかも、判決文に死亡者として記されている「被害者」12人を代理した「原告」のうち、名字さえ記されていない人が5人もいる。この訴訟は、原告側が勝訴した場合、誰がそれを受け取るのかさえ知らされないまま進められてきた。求めている損害賠償額は、1月訴訟の2倍になる2億ウォン(約2900万円)である。

 「被害者」本人がほとんどいない「原告」らは敗訴し、5月6日、判決を不服としてソウル高裁に控訴した。第1審の判決文における「被害者」が16人だったのに対して控訴参加者は12人という。このところ支援団体の分裂が目立つが、「原告」らも分裂し始めているようだ。

なお続く訴訟関係者による非難、葛藤

 4月の判決は、慰安婦問題訴訟を主権免除の例外対象として認めなかった点で、1月の判決とは正反対と言われた。確かに「主権国家は、他国の裁判所で裁かれない」という主権免除をめぐる考え方をはじめ、1月の判決とは異なる考え方が随所で確認できる。しかし、だからといって慰安婦問題自体についての考え方が1月の判決と根本的に異なっているわけではない。…

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