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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「ヤナカジ」とは沖縄の言葉で悪い風…

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 「ヤナカジ」とは沖縄の言葉で悪い風、村や家に入り込もうとしている悪鬼悪霊をいう。屋根の上のシーサー、道の行き止まりにある石敢當(いしがんとう)と呼ばれる石標などは、ヤナカジから家や村を守る魔よけという▲疫病はヤナカジの最たるものだが、「シマクサラシ」とは悪疫から村を守るために牛や豚を犠牲にするかつての沖縄の祭事である。主に旧暦2月、村の入り口に牛や豚の骨を結んだしめ縄を張り、悪疫の村への侵入をはばんだという▲ちなみに琉球王朝時代の沖縄では、本土での種痘普及に先立ち仲地紀仁(なかち・きじん)という医者が1848年に牛痘苗による種痘を行ったといわれる。天然痘の悪風封じには、獣骨のしめ縄よりやはりワクチンの霊力が決め手となったことだろう▲沖縄県では先日10万人当たりの新型コロナ週間感染者数が全国最多を記録、来月20日までの緊急事態宣言下に入った。これで宣言対象は全国10都道府県に拡大したが、すでに宣言下にある9都道府県の期限ももう今月末に迫っている▲政府は今週中に宣言延長をめぐり判断するが、沖縄の「来月20日」にそろえる案も浮上している。はてさて感染状況や医療現場の実態はそれを許すかどうか。五輪開催にむけ感染状況をコントロールしたい政府の思惑もからんでくる▲高齢者のワクチン接種を7月末に終えるという首相の大見えも、政権や五輪開催に吹きつける悪い風への魔よけか。どうあれ感染を抑え、医療を守ることをすべてに優先してほしい今日の変異株封じである。

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