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コロナ禍が格差拡大に拍車をかけ、AI(人工知能)技術の進歩や気候変動、少子化が、社会の姿を大きく変えつつある。これから世界はどうなっていくのか。小説を通じて人間の心のあり方や、社会との関係を問うてきた作家の平野啓一郎さんは、26日発売の新刊「本心」(文芸春秋)で近未来の日本を描いた。「社会が変化し続ける限り、文学も終わらない」と語る平野さんに、作品に込めた思いを聞いた。【関雄輔/学芸部】
格差の果てにあるものとは
「この数年、取材などで未来について聞かれることが増えました。僕自身、子供が2人いて、その子たちがどんな世の中を生きていくのか考えることがあります。未来を考えることは、現在の教育の問題にも直結しています」
物語の舞台は、自由死(安楽死)が合法化された2040年代の日本。母子家庭で育った主人公の青年は、自由死を望みながら、事故で命を落とした母を、AIとVR(仮想現実)技術で「ヴァーチャル・フィギュア(VF)」として再生し、その「本心」を探ろうとする。
「僕は団塊ジュニア世代ですが、(人口が相対的に多い)この世代が高齢者になることに社会が戦々恐々としている。『いつまで生きるのか』というプレッシャーの中で老後を生きるとしたら、その時、自分が何を思うだろうかということを考えたのも執筆のきっかけです」
作中で描かれる近未来では、人々の間の経済や教育の格差がより深刻化している。…
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