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シングルマザーも子も飢えさせない 私たちが米を配り続ける理由

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困窮するシングルマザーに送る米を前に、食料支援への思いを語るNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西」の山口絹子理事長=大阪市北区で2021年5月24日午後3時59分、野口由紀撮影 拡大
困窮するシングルマザーに送る米を前に、食料支援への思いを語るNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西」の山口絹子理事長=大阪市北区で2021年5月24日午後3時59分、野口由紀撮影

 「我が子を満腹にさせてあげたい」「食べるのもギリギリの生活です」。3冊のファイルには、新型コロナウイルスの感染拡大で苦境に立たされているシングルマザーたちの悲痛な叫びがあふれていた。そんな声が届いたNPO法人は、今日も彼女たちに米を配る。母も子も、誰も飢えることがないように。【野口由紀】

途切れることないメールや電話の相談

 「コロナ禍で無職になり、1年が過ぎました」

 「就職先が見つからず困っています」

 「収入が減少し、貯金を取り崩す生活です」

 母子家庭を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西」(大阪市北区)には、新型コロナの感染が広がり始めた2020年3月ごろから、そうしたメールや電話が寄せられるようになった。相談は途切れず、訴えの内容をまとめたA4判のファイルは3冊に及ぶ。

 1年以上にわたって切実な声を受け止めてきた理事長の山口絹子さん(67)は「かつてないほど多くの相談が押し寄せている」と厳しい表情で語る。自身も1人で長男を育て上げたシングルマザー。35年にわたって自分と同じ境遇にある女性を支援してきたものの、経験したことのない事態に襲われている。「コロナ禍の前は相談者をフォローできたが、相談が急増し、その後どうなったかまで把握しきれなくなった」と歯がゆさを感じている。

「ご飯の量が足りません」訴える母親

 失業や解雇、「シフト減」による収入の減少――。シングルマザーが困窮する背景には、パートやアルバイトなど非正規雇用で働く人の多さがある。最低賃金レベルの給料で働いたあげく、職を失った人も少なくない。山口さんらは相談者に自治体や国の支援制度を案内し、一緒に役所へ出向くこともある。「元からあった格差がコロナ禍で視覚化された。今まで綱渡り的な生活を続けてきた人たちが、限界を迎えている」というのが実感だ。

 「1日8時間働けば、親子が食べていけて、教育費も貯金できる。そんな当たり前のことができなくなっている」。20年に制度がスタートした「同一労働同一賃金」の徹底など、平時から待遇差を是正しておく必要性も強調する。

 影響が長期化するなかで、圧倒的に多いのが食料支援を求める声だ。

 「子どもが食べ盛りで、ご飯の量がとても足りません。満腹にさせてあげたいです。ご飯の後にいつも『もっと食べたい』と言います。胸が締め付けられる思いです」

 「パートで働いているけど、(給料の)ほとんどが子どもにいって食べるのもギリギリの生活をしています」

 ファイルにまとめられた声からは、食費を削らざるを得ない母子家庭の窮状が浮かぶ。妊娠中の女性から「1日1食で切り詰めた生活をしているが、もう限界です」と食べ物を求めるメールが届いたこともある。

「政府は経済的支援を」

 こうした状況に、山口さんたちは企業や団体、個人から提供された米や即席麺などの食料品を送ったり、近畿各地で開く交流会で配ったりする支援を続けてきた。4月には「大阪労働者福祉協議会」(大阪市)と連携し、缶詰やレトルトなど長期保存可能な食料品を150世帯に送った。5月には「生活協同組合コープこうべ」(神戸市)から提供を受けた5キロ入りの米100袋の発送を始めた。

 「このままでは、米騒動のようなことが起きてもおかしくない」。山口さんの目には、かつて生活苦で立ち上がった女性たちの姿が浮かぶ。「私たちは重たい米を配る。政府や自治体は、軽い1万円札を配ってほしい」

 しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西への問い合わせは、06・6147・9771。支援物資だけでなく、送料の寄付も募っている。

国は子ども1人に5万円の支援策

 新型コロナの感染拡大は、母子家庭が大半を占める「ひとり親世帯」の家計に大きな影響を与えている。

 独立行政法人「労働政策研究・研修機構」は2020年11月、子どもを養育している親や、子のいない既婚者ら計1000人を対象に緊急調査した。それによると、「最近1カ月に必要な食料が買えないことがあった」と答えたのは、ひとり親世帯で35・6%だった。父親も母親もいる「ふたり親世帯」よりも8ポイント高かった。

 就労による直近の月収が「新型コロナの影響で減少したまま戻っていない」と答えたふたり親は16・1%だったのに対し、ひとり親は20・2%。また、年末に向けての暮らしが「大変苦しい」「やや苦しい」と答えたふたり親は計45・3%だったが、ひとり親は計60・8%に上った。

 コロナ禍で困窮したシングルマザーらへの支援策として、国は20年度に「ひとり親世帯臨時特別給付金」(第1子5万円、第2子以降は1人3万円)を2回支給した。21年度も低所得者を対象にした「子育て世帯生活支援特別給付金」(ひとり親世帯分)の支給を決定。給付額は子ども1人あたり一律5万円に増額された。問い合わせは厚生労働省コールセンター(0120・400・903、平日午前9時~午後6時)へ。

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