「五輪やってる場合か」広がる貧困 炊き出しの列、過去10年で最多

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支援団体「TENOHASI」は毎週水曜夜も、おにぎり配布と夜回りをしている。5月26日の配布は82人が並んだ。コロナ前は25人ほどだった=東京都豊島区の池袋駅前公園で2021年5月26日午後9時28分、木許はるみ撮影
支援団体「TENOHASI」は毎週水曜夜も、おにぎり配布と夜回りをしている。5月26日の配布は82人が並んだ。コロナ前は25人ほどだった=東京都豊島区の池袋駅前公園で2021年5月26日午後9時28分、木許はるみ撮影

 体重は17キロ減り、所持金は10円を切った。寝る場所はネットカフェから路上になった--。新型コロナウイルスの影響が長引く中、仕事を失うなどした人たちの生活がますます追い込まれている。東京・池袋の公園で支援団体が続けている「炊き出し」に集まった人数は今年に入ってさらに増えて過去10年で最多となり、リーマン・ショック(2008年)直後の水準に迫っている。苦境に耐えきれず、初めて支援を受ける人が目立つという。最近、路上で暮らすようになった男性(62)もその一人だ。緊急事態宣言下で、飲食店の清掃の仕事は2カ月近くない。「もう、もたない……」。宣言の延長が決まり、男性は絶望したように声を落とした。【木許はるみ/デジタル報道センター】

初めての炊き出し 1日1食で体重が17キロ減

 「こういうところ、来たことなかったんだ。会場のそばまで来ても、(恥ずかしくて)なかなか入れなかった。でも、さっきあいさつした人が『いいから』『いいから』って言ってくださって」。5月22日午後7時、池袋駅東口の公園。生活困窮者の支援を行うNPO法人「TENOHASI(てのはし)」が約1時間の「炊き出し」を終え、片づけをしていた。炊き出しといっても、今は感染対策のため、個別包装された食料を配っている。公園の隅で、配られたパック入りのカレーを手にたたずむ小柄な男性がいた。紺色のジャンパーに同じ色のキャップ帽。記者が話しかけると、親しみやすい口調でここ数カ月の生活を語ってくれた。

 男性が初めて食料支援を受けたのは今年2月だった。公園から少し離れた場所から様子をうかがっていたところ、てのはしの支援者に声をかけられ、食事を受け取ることができたという。男性は取材中もその支援者を見つけると、帽子を取って、深くお辞儀をしていた。

 「あれからもう3、4カ月になるのか。冬はまだ日が短くて暗かったけど、今は明るいでしょう。だからこうやって帽子をかぶっている。やっぱりまだだめなんだね、羞恥心があるんだよね」。顔を隠すように帽子を目深にかぶり直し、こう続けた。「1日1食が続き、ここ1年で体重は17キロ減ったんです。そんな生活に慣れてしまいました」

子供の存在が励み コロナで転落

 男性は約10年前に離婚し、東京都内のアパートで1人暮らしを始めた。離婚のきっかけは、男性が知人の借金の連帯保証人になっていたために、持ち家などの財産を差し押さえられたことだった。かわいがっていた2人の子供とも離れざるを得なかったが、時々レンタカーを借りて息子や娘の家の近くまで行き、元気な姿をそっと見ることが唯一の楽しみだった。「子供たちが独立して立派に暮らしていることだけが励みで」と表情を緩める。

 一人になってからは、不動産業などを経てトラックの運転手になり、全国を回った。仕事で家を留守にすることが多かったため、アパートを引き払い、ネットカフェやホテルで生活するように。更新時期の勘違いから運転免許が失効して以降は、荷物の仕分けや飲食店の清掃で生計を立ててきた。

 男性は振り返る。「コロナの前は週に5日働いて、月収15万円くらいはあったんです。食うには困りませんでした」。新型コロナの感染が拡大した昨年春以降、徐々に仕事がなくなり、仕事は週に2回、月収は4万円にまで落ち込んだ。

 「それでも、12月まではまだよかったんです。…

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