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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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昨年7月、当時のトランプ米政権が…

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 昨年7月、当時のトランプ米政権が世界保健機関(WHO)を「中国寄り」とみなして脱退を通知した時のことだ。最大の資金拠出者が加盟国ではなくなるかもしれないという観測が広がった。米国に次ぐ第2位の拠出者は民間の財団だったからだ▲米マイクロソフトの創業者で、貧困救済などの寄付活動に熱心なビル・ゲイツ氏が妻のメリンダ氏と共同で設立した財団だ。WHOへの寄付金は600億円超。日本の拠出金の3倍、中国の6倍に相当する▲バイデン政権が脱退を取り消し、財団がトップに立つことはなかった。それでも中小国の国内総生産(GDP)以上の資産を持つゲイツ氏のような富豪が、国連機関でも影響力を増していることが印象づけられた▲今月、ゲイツ夫妻が離婚を発表すると、欧米メディアは「慈善活動の世界を揺るがした」と報じた。欧米には寄付に頼るNGOなどの組織が少なくない。財団の行方が心配だったのだ▲財団は夫妻の離婚後も寄付活動に変化はないと強調している。ホッと胸をなで下ろしているWHO関係者もいるかもしれない。一方で民間資金に頼りきりでいいのかと懸念する声もある▲WHOは新型コロナウイルスのパンデミックを防げなかった反省に立ち、開会中の総会で機能強化策などを論議している。中国の反対で台湾の参加が見送られるなど相変わらず国家の利益が前面に出ている。時代の変化を見据えた改革を実行できなければ、将来も同じ轍(てつ)を踏むことになりはしないか。心配だ。

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