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米国社会と差別 克服への努力を粘り強く

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 黒人差別に抗議する「ブラック・ライブズ・マター」運動が全米を席巻して1年になる。きっかけは、黒人男性が白人警察官の暴行を受けて窒息死した事件だった。

 警官に首を押さえつけられ、「息ができない」と訴える被害者の映像がソーシャルメディアで拡散し、抗議運動は世界に広がった。

 警官は殺人の罪で起訴され、先月、裁判で有罪の評決を受けた。こうした事例で陪審が有罪を認定するのは異例という。

 バイデン大統領は先週、「行動を起こす必要がある」と警察改革の必要性を訴え、人種差別の克服に向けた強い意欲を表明した。

 平等の理念の実現を願わずにはいられない。だが、この1年を振り返って見えてくるのは、それにはほど遠い厳しい現実だ。

 黒人の人口は白人の5分の1に過ぎない。だが、昨年、警官の取り締まりで死亡した黒人の割合は白人の3倍近くだった。

 武器を所持していなかったにもかかわらず死亡した例はとくに黒人に多かった。警官が持つ黒人への偏見や恐怖心を反映したともいえる。

 批判を受けて多くの大都市の警察が予算や人員を削減した。ところが、巡回などが減り、殺人事件が急増しているという。

 職務に忠実に正当な取り締まりをしている警官が大半だろう。過度な警察批判が犯罪の急増を生むジレンマは、人種間の分断がそれだけ深刻なことを示している。

 昨年春から猛威をふるう新型コロナウイルス感染症が分断を助長し、格差を広げた。

 コロナによる黒人の死亡率は白人の2倍近い。ワクチン接種率も白人より低い。コロナ下の失業率は黒人がひときわ高い。

 格差の縮小には、貧困対策が欠かせない。バイデン氏は大規模な経済対策を表明している。米議会はこれを後押しすべきだ。

 米国の差別問題は歴史的に根深い。だが、それを乗り越えようと努力が積み重ねられてきた。その健全さを失ってはなるまい。

 コロナ禍ではアジア系住民への差別が増大した。憎悪犯罪対策を強化する法律が超党派の支持で成立したのは、成果だろう。

 差別の克服には、粘り強い取り組みを続けるしかない。

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