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#五輪をどうする

「裁判で中止訴えて」  長野の“裏側”を見た市民

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東京五輪の聖火リレーの沿道で抗議をする江沢正雄さん=長野市内で2021年4月1日、岡崎啓子さん提供
東京五輪の聖火リレーの沿道で抗議をする江沢正雄さん=長野市内で2021年4月1日、岡崎啓子さん提供

 「東京都民は本当におとなしいですよ。五輪の中止を裁判で求めてもいいはずなのに」。1998年の長野五輪から五輪そのものに反対してきた染織業の江沢正雄さん(71)はこう語る。「国際オリンピック委員会(IOC)は自分たちの商品を売り歩く人たちです。長野の時から市民の声に耳を傾けてはいませんでした」。地域住民の立場から五輪招致、そしてIOCの「闇」を肌身に感じてきたという江沢さんに、東京五輪にどう向き合うべきか聞いた。【聞き手・木許はるみ】

 江沢さんは、1980年代から長野五輪招致のための土地開発に反対し、89年に「オリンピックいらない人たちネットワーク」を結成した。当時、長野県議会は「県民の総意」として招致を決議し、県全体に五輪称賛のムードが広がっていたという。そんな中、異論を唱え続けたのが江沢さんだった。89年の長野市長選は五輪推進派の候補者ばかりだったことから、五輪反対の民意の受け皿となるために江沢さんの妻紀子さんが立候補し、現職の10万3650票に次ぐ1万5406票を獲得した。

 「市民にできることは手を尽くしました」。江沢さんは選挙のほか、情報公開や住民監査請求、裁判や検察への告発など、法的な手段を駆使して五輪の問題を追及した。一連の調査をきっかけに、招致委員会の会計帳簿が焼却されていたことが明らかになった。こうした草の根の住民運動は専門家からも高く評価され、人権擁護をする個人・団体に贈られる「多田謡子反権力人権賞」を98年に受賞している。

「緊急事態宣言下でも開催」とIOC委員

 ――IOC幹部の発言が連日、報道されています。週刊文春が報じたIOC最古参委員のディック・パウンド氏の「菅義偉首相が中止を求めても、大会は開催される」という発言などに驚いています。

 ◆開催地の市民感情を逆なでする発言に、市民の姿をまったく見ようとしないIOCの本質がうかがえます。IOCはオリンピックという商品を高く買ってくれるところを探して、世界中を歩き回っている人たちの集まりです。自分たちに向けられた意見を受け止めてしまうと、オリンピック中止につながるとわかっているのでしょう。市民の命を軽視して開催を強行することに意味があると思っているのです。今後も各地で開催を続けたいなら、まずは開催国の市民に敬意を払うべきです。ただ、そういう考えはまったくなさそうですね。「緊急事態宣言下でも開催する」なんて、どうして言えるんでしょうか。日本政府もそれに怒らない。都民ももっと怒っていいと思いますよ。

 ――長野五輪の時、IOCはどのような存在でしたか。

 ◆行政や警察、経済界もIOCに逆らえないんだと思いました。忘れもしないのが1991年1月のことです。立候補地の視察のためにIOCの委員らが長野に来ました。私たちは長野駅のホームに立って、駅に到着した委員に直接抗議の声を届けようとしました。「IOC GO HOME」などと声を上げたところ、どこからともなく手が伸びてきて、体を押さえつけられ、文字通り口を封じられそうになりました。ハンドマイク…

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