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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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 第一次大戦での米軍の仏戦線への登場を報じる当時の新聞の片隅には「西班牙(スペイン)に奇病流行」とある。「国王アルフォンソ、首相マウラ氏以下数名の閣員」の感染を伝える記事で、「スペイン風邪」の始まりだ▲実は1918年6月のこの時点で、すでにインフルエンザは戦線の兵士に広がり、日本にも伝わっていた。だが欧米の交戦国は感染拡大を機密とし、王族らの感染が派手に報じられた中立国スペインの名が病名に冠せられたのである▲新型コロナでは米国のトランプ前大統領が「中国ウイルス」とくり返し発言し、アジア系市民への差別やヘイト犯罪を誘発している。だがその後も変異株には発生国の名を冠し「英国株」「インド株」などと呼ぶのがならいとなった▲その変異株に新たにベトナム型が加わったようだ。同国保健相によれば新変異株は英国型とインド型が合わさったもので、既存株よりはるかに感染力が強い。今までコロナ封じに成功してきたベトナムにも感染急拡大をもたらした▲変異の早さには舌を巻くが、世界保健機関(WHO)は特定国への偏見を避けるため変異株の呼称にギリシャ文字をあてるという。英国株はアルファ株、南アフリカ株はベータ株、ブラジル株はガンマ株、インド株はデルタ株になる▲この調子だとベトナム株はイプシロン株となるのか。またも水際での防疫をあっさり破られてほしくないが、さらに心配なのはその先だ。はなから一国の名前に収まらない「五輪株」の出現だけは避けたい。

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