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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「エニグマ」とは…

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 「エニグマ」とは謎という意味である。第二次大戦で使われたドイツの暗号機械がそう呼ばれ、その暗号の解読に英国の天才数学者チューリングらが成功した。連合軍の勝利に大きく貢献したのはもちろんだ▲だがこの功績は戦後も長く秘匿され、コンピューター科学の父ともいえるチューリングは非業の死をとげる。エニグマ解読が戦後も機密とされたのは、英国が押収した機械を各地の植民地政府に使わせ、情報を盗み取っていたからだ▲いわば身内をもだまし、功労者も見捨てる国家の情報戦の非情をあらわにした歴史のひとこまである。そんな諜(ちょう)報(ほう)の世界だから米国による同盟国首脳の盗聴の報道も「またか」という感じだが、何らかの決着はつけてほしいところだ▲欧州のメディアが報じた米国家安全保障局(NSA)によるメルケル独首相ら欧州各国の首脳、高官へのスパイ活動である。それによるとデンマーク情報機関の協力の下、同国の海底ケーブルを経由して首脳らの通信を傍受していた▲メルケル首相への盗聴は米CIA元職員のスノーデン氏も暴露した。マクロン仏大統領は報道が事実ならとした上で「同盟国の盗聴は容認できぬ」と真相解明を求めている。米欧関係再建を図るバイデン米大統領はさて何と答えるか▲エニグマといえば、かつてCIAと西独の情報機関が共同で秘密買収したスイスの暗号機会社の製品で同盟国の情報も窃取(せっしゅ)していたのが発覚した。油断もすきもない情報ジャングルの「きょうの友」である。

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