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普賢岳の大火砕流30年 災害の重い教訓忘れまい

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 長崎県の雲仙・普賢岳の大火砕流発生から30年がたった。

 死者・行方不明者は43人に上り、毎日新聞社員3人を含む多数の報道関係者も犠牲になった。避難勧告が出されていた区域で取材中だった。

 報道陣に同行したタクシー運転手や、見回りに当たっていた消防団員らも巻き添えとなって命を落とした。

 自然の脅威に対する認識の甘さと取材のあり方に厳しい目が向けられた。その後の災害報道における重い教訓となっている。

 2014年には長野、岐阜県境の御嶽山が噴火し、登山者ら63人が犠牲になった。日本は世界の7%に当たる111もの活火山を抱えており、災害にどう備えるかは重要な課題である。

 しかし、対策はまだ道半ばだ。

 まず、避難計画の策定が十分でない。御嶽山の災害後に改正された活火山法で、火山への警戒が必要な地域の市町村に義務付けられたが、策定し終えたのは約7割にとどまる。

 研究者も足りていない。各地で防災対策を講じるうえで、個々の火山の特性に詳しい専門家の存在は欠かせない。噴火の予測技術を向上させるためにも、人材育成を一層進めなければならない。

 住民や登山者が火山災害の恐ろしさを忘れないように、後世に伝えていく取り組みも大切だ。

 普賢岳の取材拠点となった通称「定点」で今春、火山灰に埋まった車両3台が30年ぶりに掘り起こされた。遺構として整備され、車両も展示されている。

 整備を進めたのは地元の住民たちだ。災害の記憶が風化するのを防ぎたいという思いが込められている。

 火山は美しい景観や温泉など多くの恵みも地域にもたらす。普賢岳を擁する島原半島も、農業と並んで観光が人々の暮らしを支えている。

 一方で、地元では、噴火で生まれた溶岩ドームと呼ばれる堆積(たいせき)物が大地震や豪雨で崩落する恐れが指摘されており、今も警戒を余儀なくされている。

 この国で火山といかに共生していくかは避けて通れないテーマだ。災害の教訓を防災力の強化につなげていく必要がある。

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