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コロナ条例が求める国民への「責務」 差別を生みかねない理由とは

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新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、市民や企業に努力義務を課した条例を可決する名古屋市議会=名古屋市で2020年3月9日、野村阿悠子撮影
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、市民や企業に努力義務を課した条例を可決する名古屋市議会=名古屋市で2020年3月9日、野村阿悠子撮影

 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、まん延を防ぐための住民の責務を定める条例を作る自治体が増えている。患者や医療関係者への差別、誹謗(ひぼう)中傷が深刻だからだ。しかし、人々が担う「責務」とは何か。責務を求めるほど差別を助長してしまう逆転現象が起きる恐れはないのか。生命・医療倫理が専門で、全国の条例を調査する東京大の井上悠輔・准教授に取材した。【永山悦子】

52自治体で「責務」求める

 井上さんの調査(注)によると、今回の新型コロナの感染拡大を受けて今年1月15日までに策定された条例のうち、行政の組織再編や公的料金の減免など制度改正にかかわるものは除き、コロナ流行期での住民の責務や、住民に期待する役割に言及する条例は52(都道府県13条例、市町村39条例)あった。その後も条例の数は増えているという。

 概要は次の通り。最初に公布された条例は、昨年3月の名古屋市の「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を全市一丸となって防止するための条例」だ。都道府県別では、愛知県(1県8市町)、宮城県(5市町)、群馬県(4市町村)が多かった。

 住民の「責務」として、「感染予防に努めること」「行政の対策に協力すること」などが定められている。鳥取県のように、感染症の流行によって売り上げが落ちた商品などを積極的に購入するなど地域経済に貢献するよう求めるものもある。

 8割に当たる43の条例は、患者や医療従事者などへの差別的取り扱いや、誹謗中傷を禁止している。差別的な扱いがあった場合、行政などが相談に応じたり支援したりするほか、啓発普及や教育を実施する。和歌山県は誹謗中傷した者に対し、問題であることをわかりやすく説明したり、勧告したりする。新潟県弥彦村も、人権侵害への勧告や、勧告に従わない者を公表することを盛り込んでいる。

 東京都などで一時、規定に違反した場合の罰則を含む条例が検討されたが、井上さんたちが調べた条例にはいずれも罰則はなかった。

「理想」の市民像が差別・偏見生む恐れ

 公衆衛生対策を進めるには、人々の協力が欠かせない。罰則に頼らず、人々の主体的な取り組みを促すことが望ましい。これまで作られた条例も、こうした背景があって「責務」が書き込まれたとみられる。井上さんは…

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