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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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ダスティン・ホフマンさんが…

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 ダスティン・ホフマンさんが妻に去られて子育てに奮闘する父親を演じた米映画「クレイマー、クレイマー」(1979年)は世界的に社会現象を引き起こした。離婚、親権、働き方、子育てのあり方。自分の生き方に照らして考えさせられるテーマが満載だった▲日本では仕事中毒の父親に感情移入した男性も多かった。先輩の映画記者は「仕事を持ちながらの男の育児は大変」「家庭はやはり戦士の休息の場」と評し、女性読者から猛反発を受けた。「共働きが常識的な若い世代とは違う中年男の常識をあえて述べた」という「釈明」に時代がうかがえる▲日本社会は当時から大きく変わった。専業主婦世帯が半減する一方、共働き世帯が倍増し、核家族世帯の3分の2を占める。男女平等に向けた法整備が進み、男性の子育てをイメージアップさせた「イクメン」が流行語になった▲男性も最大で4週間の「産休」を取得できる改正法が全会一致で成立したことにも社会の意識が表れているのだろう。問題は制度と実態の隔たりだ▲国連児童基金(ユニセフ)の調査では、父親の子育て休暇制度自体は日本が先進国で最も恵まれている。だが、取得率が圧倒的に低い。ユニセフは「職場の否定的な空気」を指摘する▲企業文化を変える責任は経営者にもあるが、若い人たちもどんどん声を上げてほしい。冒頭の映画の父親は奮闘しながらフレンチトーストを作る腕を上げた。妻や子においしい朝食を出す父親が当たり前の社会を目指したい。

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