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時の在りか

「靖国」など日本の戦後をテーマに取材を続けている伊藤智永編集委員が、政治を「座標軸」に鋭く論じます。

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五輪の下に敗れし者たち=伊藤智永

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東京五輪・マラソンの円谷幸吉。2位で競技場に入ったが、ゴール目前で英国選手に抜かれ3位=1964年10月21日
東京五輪・マラソンの円谷幸吉。2位で競技場に入ったが、ゴール目前で英国選手に抜かれ3位=1964年10月21日

 オリンピックは競技を超えて、大会にまつわる景観や生活の変化、後先のドラマが社会的記憶を形作る。前の東京五輪(1964年)を歴史としてしか知らない世代が思い浮かべるのは、例えば新幹線や高速道路、テレビのある日常だ。人によっては、マラソンの銅メダリスト、円谷(つぶらや)幸吉の遺書かもしれない。

 「父上様母上様、三日とろろ美味(おい)しうございました。干し柿、もちも美味しうございました」

 おいやめいまで親族三十余人に呼びかけ、正月の帰省で味わった古里・福島県の食べ物一つ一つに「美味しうございました」と感謝を連ねた呪文のような手紙はこう結ばれる。

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