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天安門事件と香港 歴史の継承許さぬ弾圧だ

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 中国当局が民主化運動を弾圧し、多数の死傷者が出た天安門事件から4日で32年となった。

 香港中心部の公園では犠牲者を悼む集会が欠かさず開かれてきたが、今年は警官隊が周囲を封鎖し、市民を寄せつけなかった。自主的な追悼を呼びかけた民主活動家は逮捕された。

 関連資料を展示する「天安門事件記念館」も休館した。香港当局から「無許可営業」の疑いをかけられたためだが、「政治的圧力」と指摘されている。

 昨年6月末に施行された香港国家安全維持法(国安法)が、民主化を願う特別な日を一変させた。

 中国本土では、共産党批判に直結する事件の記憶は封印されている。インターネット上の関連情報は独自の規制で遮断され、存在すら知らない若者がいる。

 しかし、一定の自由が認められた香港では、北京から逃れた当事者が体験を語り、真相解明を訴え、一党独裁体制を批判できた。

 事件を語り継ぐ活動は、1997年に英国から返還された後も、香港の高度な自治を保障した「1国2制度」の象徴だった。

 昨年も新型コロナウイルス対策を理由に集会が禁止された。それでも1万人超の市民が集まり、警察は黙認した。

 歴史を継承する自由が、国安法によって奪われようとしている。

 教科書から天安門事件や香港の民主化要求デモに関する記述が消え、教師は授業で政治問題を避けるようになった。

 警察は民主派の中心人物を次々と逮捕し、市民の間で自己規制が広がっている。

 司法機関は警察の弾圧を追認し、議会にあたる立法会は親中派が牛耳る仕組みとなった。政府に批判的なメディア関係者が有罪判決を受け、報道の自由も風前のともしびだ。

 中国政府は、香港の統制強化を「安定と繁栄のため」と強弁している。だが、返還後50年は社会制度を変えないとする約束をほごにしたことに対し、国際的な批判は強まっている。

 習近平指導部は「謙虚で、尊敬される中国」のイメージ確立を目指すという。法の支配や人権、自由の価値に背を向けたままでは、国際社会の不信を招くばかりだ。

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