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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「虎穴に入らずんば虎児を得ず」…

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 「虎穴(こけつ)に入(い)らずんば虎児(こじ)を得ず」。約2000年前の後漢の時代、辺境平定に功を上げた将軍、班超(はんちょう)の言葉として伝わることわざだ。武人らしいが、政治家の器量を示す言葉も残る▲「水清ければ大魚なし」。統治の心得を問われ、あまり厳しくすると、かえって人心を失うというたとえに使った。あくまでたとえ話と思っていたが、実際に水を清浄化しすぎると、魚に良くないことも起きるようだ▲瀬戸内海では1960~70年代に工場・生活排水による汚染で赤潮が社会問題化した。排出規制が法制化され、今の「瀬戸内法」につながった。一方で海がきれいになりすぎたためにプランクトンが減り、漁獲高が下落傾向にある海域もあるという▲「瀬戸内法」が改正され、排出規制の緩和が可能になる。公害の時代を考えると心配にもなるが、定期的に汚染状況を調べながら海域ごとに基準を定めるそうだ。再び赤潮が問題化しないように願いたい▲「ずいぶんきれいになっている」といっても海ではなく、政治とカネの話というから驚いた。自民党の二階俊博(にかい・としひろ)幹事長の発言だ。閣僚経験者の相次ぐ公職選挙法違反事件に加え、総務省の接待漬けも明らかになり、汚染の広がりを心配している国民の方が多いだろう▲中国には「水濁れば則(すなわ)ち尾を掉(ふる)うの魚(うお)無し」ということわざもある。濁った水で魚が自由に動き回れないように、政治が乱れれば国民は自由に暮らせないという戒めだ。海とは違って政治への監視は簡単に緩められない。

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