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コロナ禍とWHO 立て直しへ協調する時だ

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 新型コロナウイルスへの対応が後手に回った世界保健機関(WHO)を、どう立て直すか。国際的な議論が始まった。

 WHOは194カ国が加盟し、世界の感染症対策や公衆衛生の推進を担う。コロナ対応でも司令塔役を期待されたが、十分に果たせなかった。

 昨年から問題点を検証してきた独立委員会は、パンデミック(世界的大流行)への準備不足や初動の遅れ、加盟国間の対立などが原因で、感染拡大を防げなかったとする報告書をまとめた。

 ウイルスの起源解明では、最初に感染者が報告された中国での調査に手間取り、いまだに各国が納得する結論を得られていない。先進国と途上国のワクチン格差も解消できていない。

 背景には、WHOの権限や財政基盤が弱いという事情がある。

 独立委は、加盟国の同意がなくても現地調査や感染情報の発信ができるよう権限を強めることを求めた。資金を安定的に確保し、機動的に活用できる仕組み作りも促した。

 先月開かれたWHOの年次総会は、権限強化を検討する作業部会の新設を決めた。一方、新たな感染症に備え、加盟国間の情報共有や連携強化を図る「パンデミック条約」の議論は先送りされた。

 WHOに限らず、多くの国際機関が機能不全に陥っている。各国が自国の利益を優先する傾向が強まり、指導力を発揮できなくなっているからだ。

 しかし、感染症はひとたび流行すれば、世界中の人々の命と暮らしを脅かす。一国だけで対応することは難しく、国際的な協調を図る場が欠かせない。

 各国がエゴにとらわれていては、感染症の情報を迅速に共有したり、科学的根拠に基づく対策を進めたりすることはできない。合意に達するまでには困難も予想されるが、着実に取り組んでいかなければならない。

 WHOのテドロス事務局長は総会の閉幕に当たり、加盟国が連携を強化する必要性を力説し、条約が協力推進に寄与すると訴えた。

 コロナ対応の反省を踏まえ、各国は協調して、WHOが感染症対策で本来の役割を果たせる体制を整えることが求められる。

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