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エンタメ小説・今月の推し!

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絡まる謎と人間描写/社会派の林ワールド=内藤麻里子

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 米澤穂信(ほのぶ)さんの『黒(こく)牢城(ろうじょう)』(角川書店)は、本格ミステリーにして歴史小説であり、しかもそこに展開するのは濃厚な人間ドラマという離れ業を見せる。『満願』(2014年)、『王とサーカス』(15年)で史上初めて2年連続ミステリーランキング3冠に輝いた作家が、ついに達した地平と言うべきか。謎解きの中に人間の心に巣くう猜疑(さいぎ)、功名、嫉妬、恐れを張り巡らせ、それらにからめとられていく人間を描いて緻密さとダイナミックさにあふれる快作だ。

 織田信長への謀反を起こした荒木村重のもとに、翻意を促そうと小寺(黒田)官兵衛が訪れる。しかし村重は耳を貸さないばかりか、通常なら殺すか送り返す使者・官兵衛を土牢に監禁してしまう。そんな折、ある種の密室状態で別の人質が殺害される。自軍に広がる動揺を警戒する村重は、たまりかねて囚(とら)われの官兵衛に相談を持ちかける。長い籠城(ろうじょう)の間に変事は起き続け、そのたび官兵衛と話し、徐々に軍紀は影響…

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