「炎に消えた兄」に会えた 悲しみつづった作文、26年ぶり手元に
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炎にのまれる兄を見つめるしかなかった。女性は8歳の時、地震で兄を亡くし、「なみだをいっぱい流しながら、もえるのを見ました」と悲しみをつづった。その作文が26年の時を経て、ワープロ打ちされた形で手元に戻ってきた。内容に胸を打たれた人が、大切に保存していたからだ。「奇跡。感謝しかない」と話す女性。「じしん」と題する1446文字の作文を巡るストーリーを記したい。【春増翔太】
「火が消えろ」と1000回思った
<お母さんはタンスが重くて動けなくて、すみと(兄の名)も大きなタンスがのってて、ベッドなんかのけて、みんなをたすけたい気持ちになってきました。>
<みか(自分の名)が出され、お母さんがだされて、すみとの番だというときに火がまわってきて、もうだめです。>
大阪府守口市で暮らす茂森美香さん(34)は26年前の1995年1月17日、神戸市兵庫区で阪神大震災に襲われた。マグニチュード7・3の大きな揺れで、当時住んでいた6階建てのマンションは横倒しに。6階の自宅で寝ていた茂森さんは、母の坂本和子さん(2015年に58歳で死去)らと共に近所の人に助け出された。だが火の手が迫るなか、部屋の一番奥でタンスの下敷きになった兄の篤弥人(すみと)さん(当時9歳)はただ一人取り残された。
<「すみとっ」とわたしがさけぶと、手をあげたとたんに、火が「ボンッ」という音がぼっと聞こえた。すみとがかわいそう。「火が消えろっ」と心で100回も1000回ぐらい思いました。>
「お母さん、助けて」。そう叫ぶ篤弥人さんの声は「熱い」に変わり、やがて聞こえなくなった。茂森さんは泣きながら、その声を聞くしかなかったという。
…
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