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田中優子の江戸から見ると

法政大総長・田中優子さんのコラム。江戸から見る「東京」を、ものや人、風景から語ります。

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田中優子の江戸から見ると

日本化の過程

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 近ごろ、葛飾北斎そして算術(数学)について、それぞれ原稿の依頼があり、楽しんで書いた。まったく別のテーマなのだが、江戸時代がデジタル社会のように思えた。北斎の出現と算術の興隆には共通点がある。それは、第一に海外から移入されたものをそのまま使うのではなく、作り直して日本化したことだ。次にその日本化したものが、印刷されたことで庶民にまで広く普及したことである。

 北斎は中国の絵手本と、ヨーロッパの遠近法や幾何学、化学顔料を使って、浮世絵風景画というジャンルを開いた。その仕事の場は基本的に「本」であった。ふすまやびょうぶ、掛け軸は「家」に属し、皆で見るものである。しかし、本は一人一人が手に取って読む。印刷技術と出版社の発展によってメディアがパーソナルなものになり、その個人化されたメディアに、情報が落とし込まれていった。江戸時代は、まるでパーソナルコンピュー…

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