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私の体はテレビでできている

早稲田大演劇博物館館長を務める岡室美奈子教授が、過去や現在の、ひょっとしたら未来のドラマの世界も旅しながら、折々のことを語ります。

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私の体はテレビでできている

「古畑」を息づかせたすごさ

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 <教授・岡室美奈子の私の体はテレビでできている>

 俳優の田村正和さんが亡くなった。主演作品は星の数ほどあれど、田村さんが唯一無二の存在であることを強く印象づけたのが「古畑任三郎」シリーズだった。冒頭で犯人がわかる倒叙ミステリー、つまり「刑事コロンボ」方式のドラマだ。派手なアクションの代わりに古畑と犯人との対話劇を中心に据えた三谷幸喜の脚本は斬新で秀逸だった。

 そして本作が大成功した要因は、間違いなく田村さんの不思議な佇(たたず)まいにもあった。卓抜な知性とおよそ刑事らしくない優雅な身のこなしに加えて、ドラマの枠を超えて視聴者に直接語りかける謎のカメラ目線。あの古畑を何の衒(てら)いもなく自然に演じられる俳優を、田村さん以外に思い浮かべるのは難しい。古畑は、引きずる過去も家庭生活もプライバシーも一切見せず、ドラマが放送される間だけ虚実のあわいにふっと現…

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