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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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1980年代の米レーガン大統領は…

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 1980年代の米レーガン大統領はスターウォーズ計画と呼ばれたミサイル防衛など派手な未来戦略を宣伝し、医学でもアルツハイマー病克服を掲げた。90年代を「脳の時代」と呼んだ次の政権もそれを継承した▲そのレーガン氏が自らのアルツハイマー病を告白したのは94年、「今、私は人生のたそがれの旅に出ようとしています」という別れの手紙が米国民の心を打った。その後研究は進んだが、人類は今もアルツハイマーを克服していない▲実際、新型コロナワクチンでは底力をみせた世界の創薬大手でも、巨額資金を投じていた治療薬開発からの撤退が相次いでいる。そのなかで日本のエーザイと米社が共同開発した新薬が米食品医薬品局(FDA)の承認を得たという▲「アデュカヌマブ」とはその薬名で、アルツハイマー病の原因とされるたんぱく質を除去する効果がある。従来の治療薬がいわば対症療法なのに対して、原因物質を取り除く新薬では認知機能低下の長期的な抑制が期待できるという▲ただ治験では有効性について相矛盾する結果も出ていて、審査では効果について否定的な見解もあったという。このためFDAは承認後も効果を確認する検証試験を行うように求めている。結果次第で承認取り消しもありうるようだ▲バイオ医薬のための高薬価も難点で、投薬には年600万円以上が必要になる。今後、日本で承認されれば、保険適用をめぐる論議も起ころう。「克服」すべきものはなおも多そうな夢の新薬の周辺だ。

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