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在京オーケストラ5月公演から ~①東京フィルハーモニー交響楽団

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軽井沢大賀ホールでの公演や都内での定期3公演を振ったバッティストーニ。今回の定期(オペラシティ公演)の一部は7月4日19:20よりNHK FMで放送される=写真・上野隆文/提供・東京フィルハーモニー交響楽団
軽井沢大賀ホールでの公演や都内での定期3公演を振ったバッティストーニ。今回の定期(オペラシティ公演)の一部は7月4日19:20よりNHK FMで放送される=写真・上野隆文/提供・東京フィルハーモニー交響楽団

 5月に開催された在京オーケストラの演奏会からいくつかピックアップして振り返る。その第1弾は首席指揮者アンドレア・バッティストーニが登場した東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会。取材したのは5月13日、サントリーホールで行われた公演。

(宮嶋 極)

 首席指揮者の久々の登場でオーケストラは「水を得た魚」のごとく伸び伸びと開放的なサウンドを響かせた。

 ステージ上の密集を避けるために弦楽器の編成は12・10・8・8・5と絞ったものだったが、この日の東京フィルは驚くほどよく鳴っていた。「ロメオとジュリエット」は〝モンタギュー家とキャピュレット家〟〝ジュリエットの墓の前のロメオ〟など9曲をチョイスしての演奏であったが、とりわけ〝ティボルト(タイボルト)の死〟における音量は圧倒的で、コロナ禍でグッと押し殺していた鬱憤を一気に爆発させたような雰囲気すら感じられた。本来のストーリーとは関係なく明るい響きが全体を支配しており、ロシア的な陰鬱さとも対極にあるような音楽作りが面白かった。これもバッティストーニ流なのであろう。東京フィルのメンバーも彼の個性を素直に受け止めて楽しみながら演奏しているように映った。

 前半は今年生誕100年のピアソラのオーケストラ作品の日本初演。ピアソラの本領であるタンゴとは一線を画す作りで、複数の版があるらしいが今回はバンドネオンを2台使用するオリジナルの形で演奏された。初めて聴いた曲なのでバッティストーニの解釈を云々(うんぬん)するのは難しいが、色彩感豊かな音作りが印象に残った。

 コロナ禍のため海外からの出入国制限が続き日本人指揮者を聴く機会が多くなっている中、たまに外国人指揮者の演奏に接するとダイナミックレンジの広さと固定観念にとらわれない個性を存分に発揮した表現に思わずハッとさせられる。この日のバッティストーニもまさにそうした演奏を聴かせてくれたような気がした。

ピアソラの「シンフォニア・ブエノスアイレス」に出演したバンドネオン奏者の小松亮太、北村聡=写真・上野隆文/提供・東京フィルハーモニー交響楽団
ピアソラの「シンフォニア・ブエノスアイレス」に出演したバンドネオン奏者の小松亮太、北村聡=写真・上野隆文/提供・東京フィルハーモニー交響楽団

公演データ

【東京フィルハーモニー交響楽団5月定期演奏会】

5月12日(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール 13日(木)19:00 サントリーホール 16日(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール

指揮:アンドレア・バッティストーニ

バンドネオン:小松亮太、北村 聡

コンサートマスター:依田真宣

ピアソラ:シンフォニア・ブエノスアイレスOp.15(日本初演)

プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」組曲より

筆者プロフィル

 宮嶋 極(みやじま きわみ) 毎日新聞グループホールディングス取締役、番組・映像制作会社である毎日映画社の代表取締役社長を務める傍ら音楽ジャーナリストとして活動。「クラシックナビ」における取材・執筆に加えて音楽専門誌での連載や公演プログラムへの寄稿、音楽専門チャンネルでの解説等も行っている。

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