苦境打破のカギは猫の兄妹 会津鉄道「らぶ」と「さくら」の物語

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駅のベンチから列車を見送る2代目名誉駅長「らぶ」(右)とアテンダント「さくら」の兄妹=福島県会津若松市の会津鉄道・芦ノ牧温泉駅で2021年4月14日午前11時50分、三浦研吾撮影 拡大
駅のベンチから列車を見送る2代目名誉駅長「らぶ」(右)とアテンダント「さくら」の兄妹=福島県会津若松市の会津鉄道・芦ノ牧温泉駅で2021年4月14日午前11時50分、三浦研吾撮影

 「猫駅長がいる駅」として知られるようになった福島県会津若松市の会津鉄道・芦ノ牧温泉駅。全国の猫好きから注目を集めるこの駅は、4月に2代目・名誉駅長「らぶ」の妹「さくら」が正社員に出世するなど、これまでにあの手この手を使い、猫の手も借り、利用客増を図ってきた。猫を巡る物語は今も進行している。

 4月17日、駅員見習だったさくらがアテンダント(案内係)に就任した。アメリカンカールの1歳の雌。名前は2020年4月に一般公募し、東京オリンピックの桜形の聖火トーチにあやかり付けられた。約1年間の働きぶりが認められて出世し、この日から運行が始まった「お座トロ展望列車」を見送り、初仕事をこなした。

 同駅と猫との関わりは1999年から続く。1匹の野良猫が小学生に保護されすみついた。後に初代名誉駅長となる「ばす」だ。

 当時から全国の地方鉄道を取り巻く環境は厳しく、利用客減で廃線も相次いだ。会津鉄道も例外ではなかったが、07年に和歌山県紀の川市の和歌山電鉄貴志駅で三毛猫「たま」が駅長に就任して人気を博すと、会津鉄道の駅員もピンときた。「ウチにも猫がいるじゃないか」

 ばすは08年、名誉駅長に就任した。程なく「猫駅長がいる駅」として注目を集め出した。一時は無人駅も検討されたが、駅業務の一部を委託された地元住民らでつくる「芦ノ牧温泉駅を守る会」が知恵を絞り、御朱印やマスクなど約80種類のグッズをそろえた。広報営業担当の小林洋介さん(36)は「ノスタルジックな田舎駅に猫がたたずむ姿で癒やされているのでは」と魅力を語る。

 名誉駅長は15年にアメリカンカールの雄「らぶ」が引き継ぎ、ばすは16年に永眠。17年には、らぶの弟「ぴーち」が施設長に就いた(20年3月退職)。観光地として広く認知され、一時は外国人観光客もたくさん訪れた。

 しかし、新型コロナウイルスの影響で客足は思ったように伸びていないのが現状だ。それでも苦境打破の鍵は猫が握る。らぶとさくらは今、2匹で列車を見送り、愛嬌(あいきょう)を振りまいている。小林さんの母で駅長の美智子さん(63)は「お客様を見送る姿が板についてきた」と目を細める。

 ばすがカメラのフラッシュで目を悪くしたため、猫の撮影は禁止しているが、同会はブロマイドを用意し、売店で販売している。洋介さんは「猫を通し、会津や福島の魅力を県外に伝えていきたい」と意気込んでいる。【三浦研吾】

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