愛媛の原告「漕艇部監督による洗脳状態」語る 仙台大はパワハラ否定

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インタビューに応じた原告の男性=愛媛県今治市で2021年5月27日午後5時26分、斉藤朋恵撮影 拡大
インタビューに応じた原告の男性=愛媛県今治市で2021年5月27日午後5時26分、斉藤朋恵撮影

 仙台大漕艇(そうてい)部で度重なるパワーハラスメントを受けたとして、学校法人朴沢学園と監督に約4460万円の損害賠償を求める訴訟を起こした原告の男性(21)=愛媛県今治市=が毎日新聞のインタビューに応じた。当時の部内の状況を、元五輪選手で同大の教授も務める監督による「マインドコントロール」のような状態だったと証言。「(同様の事例の)再発を防ぎたい」と提訴に踏み切った理由を話した。【斉藤朋恵】

「部員の前で繰り返し怒鳴りつけ」

 男性は2年生になった2019年5月、ボート競技の司令塔である「コックス」を任されたころから、監督によるパワハラに苦しんだと主張。訴状によると、部内でコックスが担う大会エントリーや会計などの業務に忙殺され、ミスが多くなった男性は監督から「お前のようなコックスは必要ない」「君の頭は腐っている」などと部員の前で繰り返し怒鳴りつけられたという。

 当時の部内の様子は「見せしめのようだった」「僕の味方をすると(監督からの)新たなターゲットになるような状況」といい、周りで心配してくれた部員も表立っては助けられなかった。同部では監督も寮で一緒に生活し、内部事情は外から見えづらい。「最初は(味方をできないことに)罪悪感がある人も、数年続けば当たり前になる。ボート部を離れても、それが(社会で)当たり前だと思ってもおかしくない」と話し、「指導の名を利用したいじめで、教育する立場の教授や監督がしてはいけない行為」と指摘する。

両親や恩師が支えに

 監督の指導方針に疑念を抱いていた男性は格好の標的になったという。徐々に精神的に不安定になり、監督と話すときにぜんそくのような咳が出たり、不眠に苦しんだりした。やがてネットで自殺の方法を調べるようになったが、両親や高校時代の恩師が支えになった。ある日、父から「やめてええぞ」と言葉をかけられ、部を離れることを決めた。「僕は運良く苦しみから逃げられたのだと思う。親が許してくれたから、そういう(自殺の)道を選ばずに済んだ」と振り返る。同年10月に愛媛の実家に戻り、重度ストレス障害などの診断を受け、精神障害者手帳の2級を取得した。

 男性によると、部内では過去にも監督のパワハラを大学側に相談した部員が複数いたが、同学園は認めてこなかったという。男性の帰郷後の話し合いでも、事実は明らかにならず、「『どう隠蔽しようか』という意図を感じた」。弁護士が入って話し合いを重ねた末に、見舞金20万円を提案されたが、服薬しなければ普通の生活を送れなくなった男性にとって、納得できる額ではなかった。

 男性は現在、県内で通院治療を受けながら競技復帰を目指す。今の目標は県代表で国体に出ること。そのためには、ドーピングに引っかからないよう、精神科の薬を使わずに生活できるまで回復することが不可欠になる。

答弁書では「人格否定していない」

 朴沢学園は電話取材に対して「(原告、被告双方の)認識に違いがあるため、裁判を通じて明らかにしていきたい」と回答。監督の代理人弁護士は「大学側に確認してほしい」と話した。朴沢学園側と監督側が松山地裁今治支部に提出した答弁書では「丁寧な説明をしたうえで厳しい言葉を用いたことはあっても、人格を否定する表現を用いることはない」と反論、パワハラはなかったと強調している。

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