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「五輪と決別せねばスポーツの未来ない」 元ラグビー代表の提言

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会談前に「グータッチ」をする菅義偉首相(右)とIOCのトーマス・バッハ会長=首相官邸で2020年11月16日午前11時17分、竹内幹撮影
会談前に「グータッチ」をする菅義偉首相(右)とIOCのトーマス・バッハ会長=首相官邸で2020年11月16日午前11時17分、竹内幹撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中、東京オリンピックが開催されようとしている。主催者は商業主義をちらつかせ、国民の根深い不安を拭い去れていない。4年ほど前から五輪を批判してきた元ラグビー日本代表の平尾剛さん(46)は「平和の祭典というオリンピックの意義は、そもそも幻想だった。ベールがはがれた今、オリンピックから決別しない限りスポーツ界の未来はない」と訴える。むき出しになった五輪の実像を、私たちは直視しなければならない。【聞き手・金志尚/デジタル報道センター】

反響薄かった「反東京五輪宣言」

 <権力者は『レガシー』作りのため、資本家にとっては商機をつかむための巨大なイベントにオリンピックが成り下がっている>

 これは2017年11月、平尾さんが連載していたウェブマガジンに寄せたコラム(https://www.sumufumulab.jp/column/writer/w/6/c/174)の一節だ。タイトルは「反東京五輪宣言」。日本オリンピック委員会(JOC)による招致段階での裏金疑惑や、新国立競技場の建設途中に起きた現場監督の過労自殺など、オリンピックの暗部が既に浮上していた。平尾さんは「どこをどう考えても開催を見送るべきという結論にしか至らない」と指摘し、開催地を返上するよう求めたのだった。

 同志社大や神戸製鋼などでバックスとして活躍し、日本代表でプレーした実績があるトップアスリートによる真っ正面からの反対。スポーツの恩恵を山ほど受けておきながら、批判する権利はあるのか。そんな迷いはあったが、二つの理由で振り切ったという。

 まずは社会、とりわけ社会的に弱い立場の人たちに、オリンピックが多大な負担をかけていることだ。「復興五輪」と言いながら、新国立競技場などの関連施設の建設が優先され、東日本大震災の被災者が我慢を強いられた。また治安維持や見栄えのために、東京では路上生活者が立ち退きを迫られた。

 またオリンピックからは、行き過ぎた勝利・メダル至上主義が垣間見えた。平尾さんがそれに気づいたきっかけは、反オリンピックの立場を取ってきたスノーボードのテリエ・ハーコンセン選手(ノルウェー)だった。ハーフパイプで金メダルを本命視されながら、1998年の長野大会をボイコット。後に「メダルを意識して、点数を取りやすい演技ばかりになるとスノーボードが発展しない。自発的創造性が失われる」とコメントを残した。平尾さんは「考えてみたら、ラグビーでも競争主義が過熱して、どのチームも似たような『勝てる戦術』を用いていました。メディアの注目度が格段に大きくなるオリンピックでは、なおさらでしょう。メダルを獲得する競争があおられ、結果として競技の発展が阻害されているのです」と語る。

 ただ平尾さんが「反東京五輪宣言」を出した当初、反響は薄かった。シンポジウムに何度か呼ばれたり、多少の取材を受けたりする程度。「無風でしたね。『自分のやったことに泥を塗るんか』みたいな声は、ほとんどありませんでした」。腫れ物に触るような周囲の空気を感じたという。

 それを180度変えたのが、新型コロナ禍だった。東京で緊急事態宣言が繰り返され、市民のワクチン接種は遅々として進まない。オリパラの延期や中止を望む声が日増しに高まると、4年前の宣言も注目を集めるようになった。

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