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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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最大の陸上動物であるゾウは…

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 最大の陸上動物であるゾウは古代から戦争にも使われてきた。カルタゴの将軍、ハンニバルがゾウを従えてアルプスを越え、ローマに進撃した故事は有名だ。インドのゾウ部隊の歴史はさらに古い。中国にも古代にゾウを軍事利用した記録が残る▲紀元前3世紀に編さんされた「呂氏春秋(りょししゅんじゅう)」は「商人(しょうひと)、象を服(ふく)し、虐(ぎゃく)を東夷(とうい)に為(な)す」と記す。商は3000年以上前の古代王朝、殷(いん)を指す。ゾウを飼い慣らし、東方の異民族を征伐したという意味だ▲現在、中国に残る野生のアジアゾウは約300頭。大半がミャンマーやラオスと国境を接する雲南省のシーサンパンナ・タイ族自治州に生息する。1970年代までは「中国最後の秘境」と呼ばれたが、今では東南アジアに似た異国情緒が人気の観光地だ▲今春、子ゾウを伴った計15頭の群れが自治州の保護区を出て北上しているのが見つかり、今月初めには約500キロ離れた省都の昆明(こんめい)市に入った。中国メディアはかつてない遠距離の「迷走劇」を現地から生中継し、当局もドローンを飛ばして監視を続けている▲北上の理由は不明だ。ただ、保護区周辺にも開発が及び、生息環境が変化したことは中国の専門家も認めている。ゾウが人に危害を及ぼす事件も増えたそうだ▲かつて黄河や長江流域にもいたアジアゾウは数千年の間にだんだんと生息地域を減らしていったという。今では絶滅危惧種だ。保護策の再検討も必要ではないか。今はゾウたちが無事に保護区に戻ることを祈りたい。

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