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政府の経済財政政策の方向性を示す「骨太の方針」の原案がまとまった。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、主要課題として「感染症の克服」を打ち出した。
国や自治体が医療機関に、感染症患者を受け入れる病床や医療スタッフの確保を要請・指示できるよう法整備を進めることが柱だ。
患者の受け入れなどで、都道府県を超えた広域的な連携ができるよう、国と地方の役割分担を明確化することを課題に挙げた。
国産ワクチンの開発・生産体制の強化や、承認手続きの迅速化も盛り込んだ。
しかし、総花的で具体性を欠き、新型コロナの教訓を十分に踏まえた内容とは言いがたい。
医療崩壊の危機を招いたのは、国が感染症のまん延を想定した病床整備や人材育成をしてこなかったためだ。その反省が生かされていない。
厚生労働省は、都道府県が作成する医療計画に新たに感染症対応を盛り込む方針を決めた。だが、骨太方針の原案では直接言及されていない。このままでは、地方任せになる恐れがある。
感染拡大の前に策定された公立病院の再編方針は、修正が明示されなかった。コロナ患者を積極的に受け入れてきたのが公立病院だ。その実績を踏まえ、見直すべきだ。
保健所の体制強化も取り上げられていない。感染経路の調査や入院先の調整など業務は多岐にわたるが、行政改革で保健所の数は大幅に減っている。感染症の専門的な知識を持つ職員も不足しており、拡充が求められる。
この他に、介護現場の対応能力を高めることも重要だ。高齢者は重症化リスクが高く、入所施設などでの集団感染は1600件を超えている。実践的な研修や専門家の支援が必要だ。
2009年の新型インフルエンザの流行後、厚労省の専門家会議は、医療体制の拡充や、保健所など感染症対策を担う機関の強化を提言していた。政府が実行を怠ってきたため、新型コロナ対応が後手に回る結果になった。
同じ失敗を繰り返すことがあってはならない。平時から感染症対策に予算や人材を確保し、非常時に備える構えが欠かせない。