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小説「無月の譜」

将棋の駒をめぐる探求の物語。失われた名品の駒を求め、ある挫折感を抱えた男が旅に出ます。作・松浦寿輝さん、画・井筒啓之さん。

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小説「無月の譜」

/186 松浦寿輝 画・井筒啓之

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 はあ、と一応竜介は頷(うなず)いたが、もどかしさは解消されない。

 ――たとえばですね、ほら、「将」の字なんか、各書体でずいぶん違うじゃないですか。同じ一つの書体のなかでも、たとえば「水無瀬(みなせ)」書体の場合、王将や金将の「将」と銀将の「将」は全然別の字みたいにデザインされている。一種の遊び心なんでしょうけど、銀将の「将」のほうは行書ふうに崩してありますよね。「無月」の場合、何かそういう特徴というのは……?

 ――いやあ、悪いけどな、具体的に「将」の字、「飛」の字、「角」の字はどうだったか、「玉」は、「金」は、「銀」は――と訊(き)かれても、もうはっきりとは思い出せないと答えるしかないな。

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