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小説「恋ふらむ鳥は」

飛鳥時代の歌人・額田王を主人公に、日本の礎が築かれた変革期の時代を描きます。作・澤田瞳子さん、画・村田涼平さん。

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小説「恋ふらむ鳥は」

/318 澤田瞳子 画 村田涼平

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 豪族・大伴(おおとも)家の一員である吹負(ふけい)は元々、文官である犬養(いぬかいの)連(むらじ)五十君(いそきみ)と面識がある。それだけに吹負はどうにか五十君の助命をと手を尽くしたが、とうの本人はここ数日ほどは食すら拒み、従容として死に就かんとしている。

 当麻(たぎま)の衢(ちまた)の戦で捕らえられたもう一人の虜将、谷直鹽手(はさまのあたいしおて)なる男もそれは同様で、放っておけば自ら舌を嚙(か)み切って自害しかねぬため、獄では常に口に荒縄を嚙まされているという。

「河内からの一隊も、五十君率いる軍勢も、それぞれ見事な戦ぶりだったとか。味方が崩れてもなお踏みとどまり、複数が取り込めてようやく討ち取った益荒(ますら)男(お)も多かったと聞きます。彼らが大和ではなく、近江の守りに付いていたら、勝敗は違ったかもしれませぬな」

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