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イスラエル新政権 地域の安定取り戻す機に

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 イスラエルに新政権が誕生した。12年ぶりの政権交代が、地域情勢の安定につながることを期待したい。

 1996年からの3年間を含め、イスラエル史上最長の15年間、首相の座にあったネタニヤフ氏は退陣した。

 新政権には右派から左派までの8政党が参加した。右派「ヤミナ」のベネット党首と中道「イェシュアティド」のラピド党首が、首相を2年ずつ交代で担当する。ベネット新首相は2019年11月から半年間、国防相を務めるなどネタニヤフ氏の側近だった。

 ネタニヤフ氏は首相在任中、アラブ諸国との和平を進め、テロ対策に力を入れた。一方、パレスチナには厳しい姿勢を崩さず、14年のパレスチナ自治区ガザ地区への軍事攻撃で2200人を超える犠牲を出した。先月の紛争でも250人以上が死亡している。

 近年、ネタニヤフ氏は収賄や詐欺、背任の罪に問われ、長期政権のおごりが指摘されていた。建国以来初めて現職首相が起訴される事態に、側近からも「政治の私物化」と批判が出ていた。

 新政権は、「反ネタニヤフ」を旗印にした寄り合い所帯となり、アラブ系政党が初めて参加した。アラブ系住民は全人口の2割以上を占めながら、都市開発などの面で置き去りにされてきた。新首相はアラブ系の生活を向上させ、格差を是正しなければならない。

 パレスチナ自治政府との和平交渉は14年に中断したままだ。米国のトランプ前政権がイスラエルに肩入れしたことで、交渉再開の糸口さえ見いだせなかった。

 バイデン米大統領はパレスチナ国家樹立を認める「2国家共存」を支持し、パレスチナ支援の再開も表明している。パレスチナ側が米国の仲介を受け入れる環境は整いつつある。

 ただ、新政権は具体的な政策では、各党間で意見の隔たりが大きい。和平交渉への取り組みやユダヤ人入植地を巡り、政権内で対立が深まる可能性は小さくない。

 イスラエル建国から73年。この地域では紛争やテロが絶えない。新政権は地域の安定を優先させ、将来の和平交渉再開につなげてほしい。日本も国際社会と共に、そうした動きを後押しすべきだ。

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