寄稿

中国発のSF小説『三体』完結 滅びの美学にわくわく=大森望(書評家・翻訳家)

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世界中で人気を博した「三体」3部作。写真手前が5月に刊行された完結編の「死神永生」(上下巻)=東京都千代田区で2021年6月10日、内藤絵美撮影
世界中で人気を博した「三体」3部作。写真手前が5月に刊行された完結編の「死神永生」(上下巻)=東京都千代田区で2021年6月10日、内藤絵美撮影

 『三体』三部作の主題は、ざっくり言うと、異星文明の地球侵略。ウエルズ『宇宙戦争』の昔からさんざん書かれてきた古めかしいテーマで、小説的な洗練を目指してきた現代SFの流れとは逆方向にある。中国発のそんなSF小説が、なぜ全世界で三部作累計2900万部を売り、日本でも50万部の大ヒットを記録しているのか?

 その答えは、たぶん、SFというジャンルが持つ原初的なセンス・オブ・ワンダー(驚きの感覚)にある。初めて「スター・ウォーズ」を見たときの、あるいは初めて「ドラえもん」を読んだときのわくわく感。「え、なに、どういうこと?」という驚きで読者をつかみ、はるか彼方(かなた)までひっぱっていく。それがこの三部作の醍醐味(だいごみ)であり、SF本来の魅力でもある。

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