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在京オーケストラ5月公演から ~②NHK交響楽団

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原田(右手前)とピアソラの協奏曲でソリストを務めたバンドネオン奏者の三浦一馬 写真提供:NHK交響楽団
原田(右手前)とピアソラの協奏曲でソリストを務めたバンドネオン奏者の三浦一馬 写真提供:NHK交響楽団

 5月に開催された在京オーケストラの演奏会の公演リポート第2弾は原田慶太楼が客演したNHK交響楽団の「5月公演 東京芸術劇場」。昨年11月に続いて南米大陸というキーワードを軸に多くの共通点を持つ4人の作曲家の作品で組み立てられた原田ならではのユニークなプログラムが披露された。取材したのは21日の公演。(宮嶋 極)

 今回取り上げた4人の作曲家はグアルニエーリ(ブラジル出身、パリに留学)、ピアソラ(アルゼンチン出身 スペイン語が母国語、パリに留学)、ヒナステラ(アルゼンチン出身、スペイン語が母国語)、ファリャ(スペイン出身、パリに長期滞在、アルゼンチンに亡命)と南米の出身や居住、パリへの留学や長期滞在、スペイン語を母国語とするなどさまざま共通点を見いだすことができる。こうした作曲家のバックグラウンドや生活環境が作品に何らかの影響を与えるであろうことは容易に予想されるところであり、今回の4作品にどのように反映されているのかを実際の演奏から聴き取ることを聴衆にも求めているかのような面白いプログラミングである。N響の定期に相当する主催公演でこうした意欲的な企画をぶつけてくる原田の意欲と積極性は評価されるべきものといえよう。さらに作曲家の名前は知っていても一流オーケストラの実演でその作品に触れることは少なく、これもコロナ禍ならではの貴重な機会である。

 ひと言で南米に関係した作曲家の作品といってもその性格は多様であり、強いて共通点を見いだすとすれば、リズムの特殊性が際立っていること、さらにパリというキーワードでくくれば、やはり音の色彩感が鮮やかということができる。1曲目のグアルニエーリは日本初演。題名が示す通り弦楽器とティンパニなど3人の打楽器という編成。急→緩→急の3楽章からなり、急の部分はバルトークを連想させる雰囲気もあった。打楽器のソロは首席ティンパニ奏者の植松透と石川達也、黒田英実が担当した。N響の打楽器セクションは音がきれいでうまい。

打楽器が活躍するグアルニエーリの協奏曲は日本初演 写真提供:NHK交響楽団
打楽器が活躍するグアルニエーリの協奏曲は日本初演 写真提供:NHK交響楽団

 ピアソラは今年生誕100年ということもあり、このコロナ禍でも取り上げられる機会が増えているように感じる。バンドネオン協奏曲はタンゴ系ほどではないにしても演奏される機会が比較的多い作品であろう。こちらも弦楽器と打楽器、ピアノ、ハープという特殊なオケ編成である。ソロを務めた三浦一馬はNHK大河ドラマ「青天を衝け」で紀行のコーナーの演奏を担当するなど注目のバンドネオン奏者。盛んな喝采にアンコールで同ドラマのテーマ曲を演奏し会場をさらに沸かせていた。

 後半2曲はN響の技術力の高さと音色の豊かさを再確認させてくれる演奏であった。原田の生気に満ちた音楽作りをしっかりと受け止め高水準の演奏に仕上げていくところはさすがである。豊かな色彩感はシャルル・デュトワの音楽監督時代に醸成されたもので、メンバーが交代してもオーケストラの中に脈々と受け継がれているように感じた。さらにこの日、コンサートマスターを務めたゲスト・コンマスの白井圭は随所に登場するソロを見事に弾きこなし、そのテクニックの確かさを大いにアピールする形となった。特に高音が美しかった。

公演データ

【NHK交響楽団5月公演 東京芸術劇場】

5月21日(金)19:00 22日(土)14:00 東京芸術劇場コンサートホール

指揮:原田 慶太楼

バンドネオン:三浦 一馬

コンサートマスター:白井 圭

グアルニエーリ:弦楽器と打楽器のための協奏曲(日本初演)

ピアソラ:バンドネオン協奏曲「アコンカグア」

ヒナステラ:協奏的変奏曲Op.23

ファリャ:バレエ組曲「三角帽子」第1番

筆者プロフィル

 宮嶋 極(みやじま きわみ) 毎日新聞グループホールディングス取締役、番組・映像制作会社である毎日映画社の代表取締役社長を務める傍ら音楽ジャーナリストとして活動。「クラシックナビ」における取材・執筆に加えて音楽専門誌での連載や公演プログラムへの寄稿、音楽専門チャンネルでの解説等も行っている。

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