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島暮らしと仕事「融合」 淡路島でワーケーション施設開業 シマトワークス 富田祐介さん=中川悠 /大阪

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「しっくい塗りや大工仕事など地域の皆さんの協力で完成しました」。ワーケーションハブ紺屋町で笑顔を見せる富田祐介さん 拡大
「しっくい塗りや大工仕事など地域の皆さんの協力で完成しました」。ワーケーションハブ紺屋町で笑顔を見せる富田祐介さん

 働き方の「ニューノーマル(新しい日常)」として取り入れる企業が増え、環境省も補助金を出すなど注目を集めている「ワーケーション」をご存じだろうか。 ワーケーションとは、「ワーク(WORK、労働)」と「バケーション(VACATION、休暇)」を組み合わせた造語で、観光地やリゾート地でテレワークを行いつつ休暇も過ごすという働き方。コロナ禍で出社せず自宅をオフィスにする働き方に注目が集まる中で、人口が少ない郊外では在宅ワーカーの受け入れ拠点を作る動きが生まれている。

 淡路島の中心に位置する兵庫県洲本市に5月にオープンしたのは、築70年、木造2階建ての古民家を改修した「ワーケーションハブ紺屋町(こんやまち)」。元酒屋の趣をそのまま残し、1階はカフェ、2階には会議室があり、宿泊部屋も併設している。「コロナが広がる前からワーケーションの需要はあったんですよ」。そう話すのは、仕掛け人の1人である株式会社「シマトワークス」(洲本市)の代表、富田祐介さん(40)だ。

 神戸市垂水区出身の富田さんは、大学卒業後すぐにフリーランスの設計士となり、島内の古民家改修工事に関わった。その後、東京の設計事務所で力を付け、「若い頃にチャンスをくれた淡路島で起業したい」と2014年、企画や地域コーディネートを専門とするシマトワークスを立ち上げた。「実はそれ以前から、1年のうち1カ月はベトナムに滞在して気分転換しながら働いていました」。富田さんはワーケーションに注目が集まる以前から、場所を変えて働く楽しさを身を持って体感してきた。

 海の幸と山の幸に恵まれた淡路島。「洲本には思わず自慢したくなるようなおいしい店が集まっています」と富田さん。島内唯一の映画館、洲本城、桜の名所、神社仏閣など四季折々の変化を感じられる暮らしや風景が身近な場所にある。お勧めの飲食店だけでなく、レンタル自転車で行ける場所、トレッキングスポットなど町を楽しむ情報を次々と教えてくれた。

 一方、仕事と余暇を両立するだけでなく、地域経済の活性化につながる可能性も感じている。拠点の名前に組み込んだ「ハブ」とは、交通網や情報網などの結節点を指す。レトロな商店街にはチャレンジショップやレンタルキッチンなどもあり、新しい一歩を踏み出せる場の提供にも積極的だ。富田さんは地図を広げながら「ワーケーションハブの良い点は、仕事場と町の魅力が一体化しているところ」とアピールする。

 富田さんの元には、大阪や東京の企業からの相談が増えている。「淡路島の魅力を伝えながら、メリットとともに、生産性の維持、仕事と休暇のメリハリなどリスクも丁寧にお答えしています」。島を訪れた人と地域に暮らす人が交ざり合うきっかけを、ゆったりとした時間の中で生み出し、未来へと町のにぎわいを創り出していく――。アフターコロナ時代に向けた富田さんの挑戦に注目したい。<次回は7月30日掲載予定>


 ■人物略歴

中川悠(なかがわ・はるか)さん

 1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から、農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。

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