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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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前漢の学者が紀元前1世紀にまとめた…

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 前漢の学者が紀元前1世紀にまとめた「戦国策(せんごくさく)」はことわざの宝庫だ。「蛇足(だそく)」「百発百中(ひゃっぱつひゃくちゅう)」「禍(わざわい)を転じて福(ふく)となす」。多くは中国古代の戦国時代に、比喩を交えて外交策などを説いた弁舌家の言葉が元になっている▲「漁夫(ぎょふ)の利」もその一つ。似た成句に「山に座して虎の闘(たたか)いを観(み)る」がある。2頭の争いを座視していれば双方が傷つき、漁夫の利を得られる。虎を米中に見立てて、このことわざを使ったのがプーチン露大統領だった▲冷戦時代にニクソン米大統領が進めた「三角外交」にも通じる。中ソ対立の激化を知った米政府はソ連とのデタント(緊張緩和)を進める一方、中国との歴史的な和解に動いた。この結果、米国は中ソ双方に対して有利な立場を築いた▲ジュネーブでの米露首脳会談では、中国をにらみ、対露関係を安定化させたいバイデン米大統領の思惑が浮き彫りになった。ロシアによるクリミア編入、米企業へのサイバー攻撃、反体制派の弾圧と対立点は多いが、批判より対話を重視する姿勢が目立った▲かといってプーチン氏が高姿勢だったわけでもない。かつてメルケル独首相を4時間、安倍晋三前首相を3時間近く待たせた「遅刻魔」がバイデン氏より先に会場入りした。やはり対米関係を重視しているのだ▲さて中国がどう動くか。中露の蜜月ぶりを示したいのではないか。3大国の関係の行方は日本にも大きな影響を及ぼす。「戦国策」由来の言葉でいえば、「長久之計(ちょうきゅうのけい)」(長期戦略)も必要になる。

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