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入管・難民問題

国外退去処分になった外国人の入国管理施設での扱いが注目を集めています。難⺠に厳しいと言われる日本。人権は守られている︖

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日本育ちなのに「不法残留」23歳クルド人青年が直面する理不尽

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難民キャンプに逃げてきたクルド人の若者。少数派で独立志向の強いクルド人は各国で弾圧にさらされている=イラク北部バルダラシュで2019年11月28日、篠田航一撮影
難民キャンプに逃げてきたクルド人の若者。少数派で独立志向の強いクルド人は各国で弾圧にさらされている=イラク北部バルダラシュで2019年11月28日、篠田航一撮影

 日本で育ち、日本語も日本の生活習慣も身についている。なのに在留資格がなく、生きるために働くことも、自由に移動することもできない。そんな外国人が私たちの社会にいることをご存じだろうか。事実上の「故郷」である日本で、「不法残留」のレッテルを貼られ続ける不合理。見えない壁に直面する、一人の青年を取材した。【金志尚/デジタル報道センター】

弾圧逃れ、9歳で来日

 「働くことっていいことじゃないんですか? なんでそこまで否定するのかが、本当に分かりません」

 埼玉県川口市で暮らすラマザンさん(23)はそう言うと、肩をすくめた。彫りの深い顔立ちが目を引く。だが全くよどみのない日本語が、紛れもなくこの国で育ってきたことを実感させる。この春、専門学校を卒業し、国家資格である自動車整備士になった。ただ、肝心の資格を生かすことができない。むなしさが言葉ににじみ出ていた。

 ラマザンさんはトルコ出身のクルド人だ。「国を持たない最大の民族」と呼ばれるクルド人は、トルコやイラク、シリアなどの中東地域に推定で約3500万人が暮らしているとされる。独自の言葉や文化を持つ一方、各国で少数派で差別や弾圧の対象にもなってきた。そのため、欧米やアジアで難民として生きている人も少なくない。ラマザンさんは9歳のとき、両親と当時1歳の弟の4人でトルコから日本に来た。近しい親族が政治犯として摘発され実刑判決を受けるなど、状況が切迫していたことが理由だった。

 川口には日本最大のクルド人コミュニティーがあり、一家は先に来日していた親族宅に身を寄せた。ラマザンさんは地元の公立小学校の3年生に編入。まだ幼かったため順応するのに時間はかからず、日本語はみるみる上達していった。

 「アニメを見たりしているうちに聞き取れるようになって、半年ぐらいでコミュニケーションの不安はなくなりました。外国人ということで嫌な思いをすることもありましたが、一番大事なのは言葉です。こちらの気持ちを伝えたら分かり合える。もうあっという間でしたね。学校にはすぐになじめました」

 5年生になると、クラスメートに誘われて野球も始めた。トルコで野球は盛んではないが、仲間と白球を追いかける楽しさを知った。中学では野球部に入り、周りと同じように坊主頭になった。

 はたからは、日本人と変わりなく学校生活を送っているように見えたかもしれない。だがラマザンさんと彼らとの間には国籍以上に決定的な違いがあった…

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