連載

加藤陽子の近代史の扉

加藤陽子・東大教授がニュースの意義や位置づけを「歴史の文脈」から読み解きます。

連載一覧

加藤陽子の近代史の扉

学術会議問題の政治過程 世論が政府の姿勢「変えた」

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
 
 

 6月15日の衆院本会議で、枝野幸男立憲民主党代表が内閣不信任決議案の趣旨説明を行った。否決前提の演説は、実のところ、野党側の所信表明のような役割を果たす。演説を聞いて驚いたのは、幾多の政権構想中の1項目ではあったが、日本学術会議問題で菅義偉首相が任命を拒否した6人を任命し直すと述べた部分である。

 早速、昔の友人から連絡が来た。「14万筆超の署名も1000を超える学会声明も、結局何も変えられなかったね。まだこの問題やっていたんだ」。よほど(任命を拒否された一人である)私は打たれ強く見えるのだろう。平気でこう書いてくる。ただ、世の多数派の見方を教えてくれるのは助かる。今回は、昨年10月から現在までの学術会議問題の政治過程をまとめ、友人への答えとしたい。

 「行動したのに何も変わらなかった」との嘆きは昔も今もある。だが多くの場合、「何も」の部分の考察不足が問題だ。運動と帰結の因果関係は意外にわかりにくい。一つ確実な例を挙げておこう。1960年の日米安全保障条約改定の一件だ。広範な反対運動にいわば「譲歩」して、改定条約に第2条(経済条項)が新設された。日米両国が、政治経済社会の各分野で自由主義の立場から緊密な連携をするとの趣旨を書き込んだことで、国内…

この記事は有料記事です。

残り1380文字(全文1909文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集