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料理は「感覚的にするもの」だったイタリア、コロナ禍でスタイルに変化。ブームになったお菓子「ゼッポレ」とは[#コロナ禍で変わった世界の食卓]

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新型コロナウイルスの影響で、私たちのライフスタイルは大きく変化しました。その中でも、とくに食生活が変わったと感じる方も少なくないでしょう。日本では自宅で料理を作る人が増え、家族で楽しめるホットプレート料理やお菓子作りの人気が高まりましたが、こういった現象は日本国内だけのものなのでしょうか。今回、クックパッドではコロナ禍による食の変化に注目。世界の食事情について各国の現地の方に取材しました。

第4回は、新型コロナウイルスによる被害を大きく受けた「イタリア」の食の変化について紹介します。大規模なロックダウンが行われ、行動制限を余儀なくされたイタリア。日本でもその様子がたびたび報じられていましたが、人々の食生活はどのように変化したのでしょうか。シチリア島のヴィアグランデに住むマリアルシアさん(36歳・主婦)に話を伺いました。

イタリアといえば「ピザ」。コロナ禍で手作りする人も

「昨年3月はロックダウンが厳しく、家にいる時間も多かったので、普段は自分では作らないような料理を作りました。例えば、家でパンを焼いたり、いろんな種類のピザを作ったりしました。家族からの評判もとてもよかったので、また自由な時間を持てる機会があれば必ず作りたいです」

現地のクックパッドスタッフいわく、イタリアの人々にとってピザはなくてはならない食べ物であり、少なくとも週1回、主に週末にはピザを食べるとのこと。

以前クックパッドイタリアで「あなたにとってピザとは何ですか?」というアンケートを実施したところ、『シェアできるもの・友情・幸せ・良い気分......私の大好きな料理のひとつです』『私にとってピザは、週末がやって来たことを意味しています。家族や仲間とのちょっとしたリラックスタイムです』『ピザは真っ白なキャンバスで、想像力を存分に発揮して何千もの色で染めることができます。大好きな料理のひとつであり、想像力を発揮できる料理であり、目と舌を満足させる完全な食事...いわばライフスタイルそのものです』など、熱いピザへの想いをつづった回答が集まりました。

このようにイタリアの国民食ともいえるピザですが、ピザ作りは家で日常的に行われていなかったそう。これまでは家では作らずに外で食べたり、買いに行くという人がほとんどでした。

コロナ禍でロックダウンが始まり、レストランが休業になると、ステイホームで時間を持て余した人々の間でピザ作りがブームになります。マリアルシアさんもそれをきっかけにピザやパンを手作りするようになったひとりです。彼女が住む地域では、パンやピザなどを作る人が増えてスーパーの小麦粉とイーストが品薄状態になりました。

これはマリアルシアさんの住むエリアだけでなく、イタリアの多くの都市でも同様のことが起きた、と現地スタッフは言います。小麦粉はイタリアの人々の食生活の基本であり、パスタ、ピザ、パンなどに使われている家庭で欠かすことのできない食材。日本で「お米」が常に欠品していたと考えると、そのインパクトの大きさが伺えます。

357f872687abd5f3c30abec2b2a39417 キャプション:昨年のロックダウン下で「ピザ レシピ」の検索数が高まったことを示すデータ(GoogleTrendより)。

「レシピを見るようになった」人々、注目集めた料理研究家とは

さらに現地の食事情に詳しい、イタリア家庭料理研究家・中小路葵さんによると、コロナ禍のロックダウンは、人々の料理の作り方にも変化を与えたといいます。

「コロナ禍でオンラインの交流が増えたことで『人々が以前よりレシピを見るようになっている』という点が面白いと思います。日本と違い、イタリアでは他の人のレシピを見て、計量して料理を作る習慣が比較的薄いです。現地の方と一緒に料理をしていると、親や祖母から教わった料理を感覚的に身に付けていて、その自分の料理を一番誇りに思っていたりします。このため、よほどのことがないと新しいレシピを探して試すことがありません。ところが、コロナ禍をきっかけにおうち時間が長くなり、SNSでの料理投稿やYouTubeの料理動画が増えたことで、多くの人がオンライン上のレシピを見て、新しい料理にチャレンジしました

それまでレシピといえば、それぞれの家庭に代々伝わるもので、料理は「感覚的に作るもの」という傾向が強かったイタリアに訪れた新たな潮流。特に人気を集めたのがイタリアの料理研究家、ベネデッタ・ロッシさんのレシピでした。

ベネデッタ・ロッシさんは1972年生まれ、マルケ州出身の女性料理研究家。テレビのレギュラー番組を持ち、レシピ本を何冊も出しています。中小路さんにその人気について伺いました。

「ベネデッタさんはイタリアで最も有名なフードブロガーです。人口約6000万人のイタリアで、SNSのフォロワーは1000万人以上、イタリアで彼女を知らない人はいない、と言われるメガインフルエンサーです。イタリア料理は『イタリアにイタリア料理はない』と言われるほど多様です。同じ名前の伝統的な料理でも地域によって作り方や材料が全く違ったりするのですが、彼女のレシピは“中間的”と申しますか、北の人が見ても南の人が見ても納得感があるものが多いのです。彼女が中部のマルケ州出身だからなのでしょうか。彼女のキャラクターやレシピのわかりやすさに加え、こうしたレシピの中間性のような要素が、『イタリア料理家』として人気を集めている一つの要因だと思います」

彼女のレシピはコロナ以前から人気だったそうですが、ロックダウンで“家食”の需要が増えるとYouTube・ブログ・SNSと、オンラインレシピ界で絶大な信頼を得るベネデッタさんのレシピに、さらに注目が集まったといいます。

中小路さん曰く、ベネデッタ・ロッシさんは、イタリア中のマンマの「憧れ」のような存在だといいます。美しい自分の生まれ故郷に住み、愛する家族に囲まれ、大きな家で犬と暮らし、そして自分の料理が色々な人に称賛される。有名なのに全くおごったところがなく、自身がテレビに出ているのを見て無邪気に盛り上がり、庭でワインをあけて家族でお祝いを始める様子がインスタグラムにアップされていたりします。レシピだけではなく、そんな彼女の人柄に魅力を感じている人も多いのだそう。

そんなイタリアで昨年3月、特に検索が多かった料理があります。その料理は「ゼッポレ」。ベネデッタさんのレシピ動画では約475万回も再生されているこの料理、一体どんなものなのでしょうか? また、検索が伸びた理由は? マリアルシアさんに聞いてみました。

なぜ「ゼッポレ」という料理が人気に?

イタリアでは毎年3月19日が『父の日』です。その日はお父さんに感謝の気持ちを伝え、伝統菓子のゼッポレを買ってきて食べるという習慣があるんです。ゼッポレは、正式には『ゼッポレ・ディ・サン・ジュゼッペ』と言います」

ゼッポレ・ディ・サン・ジュゼッペをそのまま直訳すると、「聖ヨセフのゼッポレ」という意味になります。この聖ヨセフとは、イエス・キリストの養父のこと。イタリアではキリスト教の聖人を祝う習慣があり、3月19日は聖ヨセフの日とされています。このことから、お父さんへの感謝の日になったのだそうです。

「父の日は聖ヨセフの日と同日で、聖ヨセフはイタリアでは重要な聖人として認識されています。学校では子どもたちが父親に小さなプレゼントを用意したり、手紙を用意したりしてお祝いします」

ゼッポレ・ディ・サン・ジュゼッペの検索データを詳しく見てみると、確かに2020年3月に検索数が伸びています。

4c36cf5d0d7b3739327b698c881e5bf2 父の日に食べられるお菓子なので毎年3月に検索数が伸びますが、2020年は突出しているのが伺えます。2021年もコロナ禍以前に比べて高い結果に。(GoogleTrendより)

ゼッポレというと、日本のイタリア料理店などで前菜として出てくるゼッポレをイメージした方もいるかもしれません。このゼッポレは海藻入りでしょっぱい味付けの揚げ物で、父の日に食べる「ゼッポレ・ディ・サン・ジュゼッペ」とは別物。ゼッポレ・ディ・サン・ジュゼッペはシュー生地の中にたっぷりのカスタードクリームが入っており、パンに近いしっかりした食感で、上には粉砂糖とチェリーのシロップ漬けを乗せるのが一般的。どちらもナポリからイタリア全土に広まったと言われています。

Ca4ff53d26015a2a668709af6da5db02 前菜として出されることが多いゼッポレ。こちらのゼッポレは、小麦粉に海苔など海藻を混ぜて発酵させた生地を揚げたもの。もちもちの食感を楽しめます。(画像提供:イタリア家庭料理研究家・中小路葵さん)

03e71be46a65d07bfb6541ce06c3446c こちらが父の日に食べるゼッポレ・ディ・サン・ジュゼッペ。写真はオーブンで焼いているタイプですが、揚げたものが伝統的で、好みが分かれるのだとか。(画像提供:AdobeStock)

「いつもならゼッポレ・ディ・サン・ジュゼッペはお店で買うお菓子ですが、昨年は厳しいロックダウンで気軽に買いにいくことができませんでした。そこで、初めてゼッポレ・ディ・サン・ジュゼッペを家で作ってみたんです。私の母でさえも作ったことはなく、家族に伝わるレシピのような参考になるものもありませんでした」

このような出来事はマリアルシアさんだけでなく、イタリアの多くの人々に起きたことが、ゼッポレの検索データに表れていますね。

コロナ禍において、イタリアでは「イベント食」と「料理の作り方」に変化があったことがわかりました。日本でも今年のバレンタインは衛生面を気にして市販のチョコを購入する人が増えたというニュースがありましたが、そのように各国のイベントやそれにまつわる食べ物の変化に注目してみると、意外な発見があるかもしれません。

最後に、マリアルシアさんが実際に作ったゼッポレ・ディ・サン・ジュゼッペのレシピをご紹介します。

日本では今日、6月20日が父の日です。今年はイタリア風に、ゼッポレ・ディ・サン・ジュゼッペでお祝いをしてみてはいかがでしょうか?

マリアルシアさんのゼッポレ・ディ・サン・ジュゼッペレシピ

D47b1e85072641e890495c5fd9a5d7c8 マリアルシアさんのゼッポレ・ディ・サン・ジュゼッペ。トッピングをチェリーからいちごに変えたり、カスタードに卵を使わなかったりとアレンジを加えています。夫とマリアルシアさんのご両親に振る舞ったところ、みなさん気に入ってくれたそう。

材料(14個分)

◎シュー生地
薄力粉…125g
水…125g
バター…100g
卵…225g(L玉約4個分)
塩…ひとつまみ
砂糖…ひとつまみ

◎クリーム
牛乳…500ml
薄力粉…75g
コーンスターチ…25g
砂糖…180g
バター…75g

◎飾り用
いちご(冷凍でも可。またはシロップ漬けのチェリー)…適量
アイシングシュガー(お好みで)…適量

準備

・オーブンは210度に予熱する
・バターを室温に戻しておく
・シュー生地の薄力粉、クリームの薄力粉とコーンスターチはふるっておく

作り方

1.まずはシュー生地を作る。鍋に水を入れ、バター、塩、砂糖を加えて沸騰させる。薄力粉を一気に加えて混ぜ、火から下ろす。生地がひとまとまりになり鍋肌から離れるくらいまで混ぜる。卵を1つずつ加えながらハンドミキサーの低速で混ぜ、とろりと滑らかな状態にする。

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2.1の生地を、1cm程度の星口金をつけた絞り袋に入れる。天板にオーブンシートを敷き、直径5cm程の大きさに生地を絞り出す。リング状に絞り出してから、最後に中央の穴を閉じるようにする。

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3,210度のオーブンで20分焼き、180度に下げてさらに10分焼く。焼き上がったらすぐに取り出さず、扉を開けて箸などを挟み、隙間を作った状態で10分ほど置いておく。その後オーブンから出し、冷ます。

4.生地を焼いている間にクリームを作る。ボウルにバターを入れ、ハンドミキサーで練り混ぜクリーム状にする。片手鍋に、薄力粉とコーンスターチ、砂糖を入れ、真ん中にくぼみを作る。火にはまだかけず、牛乳を少しずつ注ぎ入れながら、ひとまとまりになるまで混ぜる。滑らかでダマのないクリーム状になったら、残りの牛乳もすべて加え混ぜる。

5.片手鍋を弱火にかけ、クリームが濃くなるまで煮詰める。火から下ろして冷ます。完全に冷めたら練り混ぜたバターを加え、ハンドミキサーの高速で混ぜる。冷蔵庫で冷やす。

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6.シュー生地にクリームを挟む。シュー生地をナイフで半分にスライスする。冷えたクリームを星口金の付いた絞り袋に入れて、生地の間に絞り出し、上にものせる。

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7.最後に、洗ってスライスしておいたいちごをクリームの上に飾りつける。定番の作り方では、シロップ漬けのサワーチェリーをのせますが、いちごでもOK。仕上げにお好みでアイシングシュガーを振りかけ、完成。

(TEXT:河野友美子、植木優帆)


#コロナ禍で変わった世界の食卓

本記事は、Yahoo!ニュースとの共同連携企画です。クックパッドニュースでは、コロナ禍で変わった世界の食事情をリサーチ。各国で高まったムーブメントや、人気になった料理を現地の方にお伺いしました。世界の食卓に、明日から取り入れられる食のヒントがあるかもしれませんよ。


取材協力:クックパッド・イタリア

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