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バイデン・プーチン会談 実効性ある核軍縮が必要

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 核保有大国の振る舞いは世界に大きな影響を与える。その自覚と責任を持った行動が求められる。

 バイデン米大統領とプーチン露大統領がスイスで会談した。両首脳の初会談は約3時間に及んだ。

 人権や安全保障で対立する両国関係を印象付けたのが、終了後、別々に開いた記者会見だ。

 プーチン氏はロシアの反体制派デモを米国の連邦議会乱入になぞらえ取り締まりを正当化した。この例えをバイデン氏は冷笑し、ロシアの民主派指導者が獄中死すれば「報いを受ける」と警告した。

 米国へのサイバー攻撃では、プーチン氏が関与を否定し「米国こそサイバー王国」と切り返した。これに対しバイデン氏はロシアのサイバー攻撃が続けば「反撃する」と敵意をあらわにした。

 米露関係は冷戦後、ロシアの経済復興や米国のテロ対策などで協力が深まり、良好な関係が続いたが、米国のイラク戦争やロシアのクリミア掌握を経て冷却化した。

 不信を拭うのは容易ではない。それでも共通の利益を探る努力をしなければ溝は深まるばかりだ。

 会談では、核軍縮に向けた戦略対話を始めることで合意した。米露は世界の核兵器の9割を持つ。核軍縮の重要性を確認できたことは、前向きに受け止めたい。

 問われるのは、核軍縮の実効性を確保できるかどうかだ。両国の核弾頭数は老朽化に伴う廃棄で減っているが、配備数は増えている。

 核兵器の近代化は急速に進んでいる。実戦的な小型核の配備が始まり、相手のミサイル防衛網をかいくぐる核搭載型の極超音速ミサイルも開発されている。

 サイバー攻撃で報復を阻止できるようになれば、先制攻撃しやすくなる。いずれも核戦争のハードルを下げる要因になる。

 戦略対話を通じ、あらゆる射程の核兵器を削減し、新型核やサイバー攻撃に歯止めをかけ、検証システムを構築する必要がある。

 歩み寄りの背景には、中国と協力しつつ米国とも協調することで立場を強めたいロシアと、中国への対応に専念したい米国の思惑が一致したことがあるのだろう。

 掛け声倒れに終わらせてはならない。戦略対話を軌道に乗せ、信頼の回復を図り、世界の安定へとつながる関係を築くべきだ。

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