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脳出血で半身不随「人生中断された」 塩見三省さんの絶望と恐怖

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俳優の塩見三省さん=東京都千代田区で2021年6月10日、前田梨里子撮影
俳優の塩見三省さん=東京都千代田区で2021年6月10日、前田梨里子撮影

 俳優の塩見三省さんが今月、自身の闘病体験をつづったエッセー集「歌うように伝えたい」(角川春樹事務所)を刊行した。個性的なバイプレーヤーとして知られるが、7年前に脳出血で倒れ、後遺症で半身不随になった。リハビリを重ねて復帰を果たしたものの、この時の体験を「人生が中断された」と表現する。どんな思いで苦難を乗り越えたのだろうか。【関雄輔/学芸部】

「落差」に耐えきれず

 「『前向き』になれたわけではないんです」

 インタビューの冒頭、塩見さんはそう前置きして、言葉を選ぶようにゆっくり話し始めた。「リハビリは現状を維持するためだけのもので、体の状態がこれ以上良くなることはありません。そして自分は段々と老いていく。死と老いを観念的なものではなく、自分のものとして理解したとき、生きている実感がよみがえってきたんです」

 2014年3月19日。外出中に足の運びに違和感を覚えた。帰宅後、自宅のソファで休んでいる時に突然倒れた。前年からドラマや映画の仕事が立て込んでおり、一段落ついたタイミングだった。一命はとりとめたものの、左の手足にまひが残った。

 「果てしのない絶望」。当時の気持ちをそう振り返る。倒れる前に撮影したドラマの放送を病室で見た時は、現実を受け入れられず、ベッドの上で嗚咽(おえつ)した。軽やかに歩く自分の姿を夢で見て、ベッドから歩き出そうとして崩れたこともあった。仕事が充実していた時期だけに「それまでの人生との落差に耐えられなかった」という。「種をまく。それが次第に実る。仕事も同じで、その頃の自分はちょうど刈り入れ時だという気持ちだったんです」

 退院後は、世間からの孤立に苦しんだ。「社会から『身障者』という異物として扱われる。…

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