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犬が西向きゃ

国際報道に優れたジャーナリストに贈られる「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞した、高尾具成編集委員のコラム。

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犬が西向きゃ

小さな命を救った「親切」=高尾具成

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 六甲山系ふもとの借家に暮らして7年ほどになるが、久しぶりにフクロウの鳴き声を耳にした。先月の愛鳥週間のことだ。9年前に他界した父はこの野鳥が好きで幼少期、よく一緒に鳴き声を聞いた。想像以上に遠くまで響き、その晩も2時間ほどホーホーと何かをしらせるように鳴いていた。欧州では「知性の神様」と言われるが、4年間暮らしたアフリカでは呪術師の使いや不吉の前触れとも伝えられていた。しばらくして母が逝き、父が迎えに来たしらせだったのだと思えてならなかった。

 母の葬儀から数日後、早朝の呼び鈴で実家の玄関先に出ると、スマホを手にした20歳前後の初対面の青年が真剣な表情で「困っているんです」と言う。通りがかりに、実家と隣家のブロック塀の間に、野鳥のひな鳥が落ちて動けなくなっていることに気づいたというのだ。前日から隣家の屋根で、鳥が長い間鳴き続けているのを飼い犬に教えられたことを思い出し、ハッとした。ひな鳥を呼び寄せようとする親鳥と助けを求めるひな鳥の鳴き…

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