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常夏通信

その99 戦没者遺骨の戦後史(45)沖縄 戦没者を二度殺す

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沖縄本島南部の土砂を、日本政府が名護市辺野古の米軍基地建設の埋め立てに使う可能性があることについて抗議する具志堅隆松さん(右)。沖縄で40年近く戦没者遺骨の収容を続けてきた。遺骨を収容するだけでなく、「遺族に返す」ことが目標だ=糸満市の平和祈念公園で2021年6月21日、栗原俊雄撮影
沖縄本島南部の土砂を、日本政府が名護市辺野古の米軍基地建設の埋め立てに使う可能性があることについて抗議する具志堅隆松さん(右)。沖縄で40年近く戦没者遺骨の収容を続けてきた。遺骨を収容するだけでなく、「遺族に返す」ことが目標だ=糸満市の平和祈念公園で2021年6月21日、栗原俊雄撮影

 具志堅隆松さん(67)のハンガーストライキは3日目に突入していた。6月21日昼過ぎ、沖縄県糸満市・摩文仁の平和祈念公園。前日からこの日朝まで降っていた雨が上がっていた。沖縄戦の遺骨収容を行うボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅さんは、園内に設置されたテントの下で座禅を組むように座っていた。激戦地だった本島南部の土砂が同県名護市辺野古で政府が進める米軍基地建設のための埋め立てに使われる可能性があることから、それを食い止めるための活動を続けている。ハンストは、3月1~6日に沖縄県庁前広場で行ったのに続き2度目だ。今月は19日と20日県庁前広場で行い、21~23日は同公園で行い、テントで寝泊まりする。

67歳、具志堅さんのハンスト

 「辺野古の米軍新基地に反対する運動と受けとめられることがありますが、基地の賛成、反対以前の人道上の問題です」「多くの人に知ってほしい。国の不条理にあらがってほしいんです」「世の中に『これは明らかに間違っている』と言えることは、そう多くはありません。しかしこれは明らかに間違っています」。取材するメディアや支援者に一言一言、しっかりと話す。

 口にするのはほぼ水分だけ。「(残り少ない)すべての栄養が脳に集中している感じです」と笑う。「(南部の土砂を使っての埋め立てを)やめさせることができるのは世論です」と、具志堅さんは言う。どんなに疲れていても、同じ質問を何度受けてもメディアに丁寧に応じるのは、その世論形成につなげたいと思っているからだ。

 「疲れていそうだし、ハンストは明日あさっても続くから、少しでも体力を温存してほしい。今日は個別のインタビューは遠慮しようかな」。そう思っている私を、具志堅さんはテントに手招きしてくれた。具志堅さんと会うのは昨年6月23日、同公園で開かれた沖縄全戦没者追悼式以来だ。

 ハンスト前の体重は50キロ弱で、もともと痩せている具志堅さんだが、隣に座って見るとさらに細くなったように見えた。私が「今体重は何キロなんですか」と聞くと「計っていません。けど(3月のハンストの後)ベルトの穴が三つほどゆるくなりました」。絶句している私に、具志堅さんは笑顔で言葉を継いだ。「夕方になるとね、疲労がたまって気付かないうちに寝ているんです」。テントから100メートルほど離れた自分の車に荷物を取りに行こうとしたが、しんどくてやめたという。「集中力がなくなってきましたね……。でも、大丈夫ですよ。まだハンスト3日目ですから」

 「大丈夫って。さすがに声にいつものはりがありませんよ。明らかに痩せているし。年齢も考えましょうよ。4カ月で2度、計11日のハンストは過酷すぎますよ、具志堅さん。やめましょうよ。具志堅さんは沖縄だけでなくて、戦没者遺骨収容問題全体のリーダーですよ。倒れたら代われる人はいませんよ」と言おうと思ったが、前回のハンスト同様、やめた。鋼鉄の意志の人だ。誰がとめてやめるはずもない。幸いと言うべきかどうか、ボランティアの医師によるメディカルチェックを受けているという。

 「改めて、なぜハンストなのですか?」。そう問うと…

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