特集

Listening

話題のニュースを取り上げた寄稿やインタビュー記事、社説をもとに、読者のみなさんの意見・考えをお寄せください。

特集一覧

社説

きょう沖縄慰霊の日 歴史見つめて痛み共有を

  • コメント
  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷

 沖縄はきょう、「慰霊の日」を迎えた。76年前のこの日、3カ月にわたった沖縄戦の組織的な戦闘が終結した。

 第二次大戦末期の凄惨(せいさん)な地上戦で、日米合わせて約20万人が死亡した。一般の住民は約9万4000人が犠牲になった。日本軍が本土決戦の時間を稼ごうとして、多くの人たちが避難していた本島南部で持久戦を展開した結果だ。

 国策の名の下、住民の命や暮らしがないがしろにされた。沖縄が理不尽な負担を強いられる構図は今も変わっていない。

 1972年の本土復帰後も、重い基地負担にあえいできた。軍用機の騒音被害や米軍人らによる事件・事故は後を絶たない。最近も米軍のヘリコプターがうるま市の集落近くの畑に不時着した。

 政府は、県民の7割以上の反対を押し切り、米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設する計画を進めている。技術的にも実現の見通しが立たない中、埋め立て工事を続けている。

 埋め立て用土砂を採取する候補地に昨春、激戦地で多くの犠牲者の遺骨が眠っている本島南部を加えた。

 浮かび上がるのは、沖縄の歴史や思いを軽んじる政府の姿勢だ。

 菅義偉首相は官房長官時代、戦中戦後の苦難を訴えた翁長(おなが)雄志前沖縄県知事に対し、戦後生まれであることを理由に「歴史を持ちだされたら困る」と突き放した。

 さらに、4月の日米首脳会談では、中国を念頭に「台湾海峡の平和と安定の重要性」を共同声明に盛り込んだ。対中国の抑止力を強調するほど、最前線にある沖縄の基地負担は重くなりかねない。

 新型コロナウイルスの影響も気がかりだ。訪れる修学旅行生が大きく減り、「ひめゆり平和祈念資料館」などの民間施設は運営危機に直面しているという。

 地上戦を体験した語り部の多くは80歳代以上となり、記憶の継承が課題となっている。若い世代が沖縄の歴史を学ぶ機会を確保することが大切だ。

 慰霊の日にあたり、沖縄の人々が味わってきた絶望や痛みに思いを寄せたい。幅広い国民がこうした歴史と向き合うことが、過重な沖縄の負担を軽減する第一歩になるはずだ。

コメント

※ 投稿は利用規約に同意したものとみなします。

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集