「桜」の河口恭吾さんがたどり着いた新境地 売れない時代乗り越え

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
シンガー・ソングライターの河口恭吾さん=ミラクル・バス提供
シンガー・ソングライターの河口恭吾さん=ミラクル・バス提供

 「♪僕が、そばにいるよ」。あの、もの悲しくも優しい歌声とメロディーを覚えている方は多いだろう。2003年に大ヒットとなった河口恭吾さんの「桜」。だがその後はヒット曲に恵まれず苦しんだという。23日に配信開始の新曲「ぬれ椿」では、作曲は河口さんで、作詞を担当したのは俳優の片岡鶴太郎さん。なんとも意外な組み合わせだが、その理由とは……。【伊藤遥/学芸部】

わずか20分で詞が届く

 ――2人の出会いを教えてください。

 ◆十数年前にテレビ番組で共演したのですが、後日、お手紙をくださって。そこで個展に誘ってもらったんです。そこから始まりました。

 ――片岡さんって、どんな人ですか。

 ◆芸人、役者、画家、ヨギーなどいろんな顔をお持ちですよね。一言では難しいですが、鶴太郎さんが絵を描いているところにお邪魔させてもらうと、「ああ、やっぱりこういうふうにものづくりに臨まなければ」と非常に刺激を受けます。芸能界でとても人気があるなかで、本業と別のことにリスクを承知で挑戦するのはとても勇気がいると思います。尊敬していますね。

 ――本当に多才な方ですよね。でも作詞を依頼したのはなぜだったのですか。

 ◆今年はデビュー20周年の節目で、いろんなアーティストの方にお声がけしているのですが、自分の人生にとって片岡鶴太郎さんは本当に大切な存在で、かつ、偉大なクリエーターなので、どこかで一緒に音楽を作れたらとずっと思っていました。

 ――鶴太郎さんからの詞を読んで、いかがでしたか。

 ◆お願いしてから15~20分くらいで、(無料通信アプリの)「LINE(ライン)」で第1稿を送ってくれました。そこで鶴太郎さんの伝えたいものが、既に明確に表現されていたので、クオリティーの高さと時間の早さに驚きました。

 ――20分とは驚きました。その詞を受けて、作曲するときには何を意識したのですか。

 ◆「つらつら」とか「ぬれ椿」とか、そういうワードを鶴太郎さんからいただいて、すぐに電話したんです。すると「恭吾さん、会者定離(えしゃじょうり)という言葉がありましてね」というお話がありました。僕はその言葉を知らなかったんですが、人生のはかなさとか死生観を意味する言葉らしくて。そういう仏教観みたいなものを聞いた時に日本らしさをすごく感じたので、“和”なメロディーや情緒感を表現できたらと思いました。

 ――曲が完成したときはどのような気持ちになりましたか。

 ◆すごくいい作品ができたなと。今回、鶴太郎さんからすごくフレッシュな言葉をたくさんいただいて、大いに触発されてできたメロディーです。先日、お会いした時も「いやー、いいですねー。とてもいいですねー」と非常に喜んでくださって、一安心しました。前々から「第2の『桜』みたいな曲をね、やっぱりね、歌ってほしいんですよね」とおっしゃっていて、「そんな感じになりましたね」と話されていました。

「桜」の重荷を乗り越え

 ――03年にヒットした「桜」について聞かせてください。もともと、ドラえもんとのび太の関係を歌っているんですってね。

 ◆そうです。CMコンペ用に書いた曲で、たまたまその絵コンテの設定がドラえもんとのび太だったのです。偶然作ったものが60万枚にもなるとはつゆほども思わなかったですし、それによってヒット曲の重さというか、ある種カテゴリーみたいな中で苦しむ自分を体験してきました。つまり、「桜」と違う雰囲気の曲をリリースしても、なかなか世の中に受け入れられない。…

この記事は有料記事です。

残り1988文字(全文3427文字)

あわせて読みたい

この記事の筆者
すべて見る

注目の特集